創作新選組
□藤堂と原田とそれから新八
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本日は晴天なり。
近藤さんから、土産の団子を貰ったのだが、一人では食べきれないからどうしようかと屯所内をぶらぶら歩いていた。
「あ、左之さん。」
「よお、平助じゃねえか。」
左之は、腹に巻いている晒(さらし)を外し、切腹の傷跡を日に当てていた。
「日向ぼっこか。」
「おう。こうして日に当てとかないと古傷がうずいちまう。」
ははは、と笑いながら一文字の傷跡をぺちぺち叩きながらそう答える。
「お、団子じゃねえか!」
「ん?ああ、さっき、近藤さんから貰ったんだけどよお、一人じゃ食えねえからどうしようかと思ってたんだ。」
「だったら、俺が食ってやるよ!」
左之さんは、にししと笑いながら、ここに座れと言った。
隣に座り、日向ぼっこをしながら団子を食う。
「新八っつぁんの分も残しておくか。」
「いいや、良いって。新八は巡察でいねえし、俺たちだけで食っちまおうぜ。」
そう言ってまた一本と団子に手を伸ばしていく左之さん。
もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐもぐもぐ。
「…なんか、平和だなぁ。」
「ああ、そうだなぁ。」
空を仰ぐと澄み渡る青空。
ちゅんちゅんと小鳥がさえずる。
左を向けば、大男もとい左之さん。
今は穏やかに団子を食ってるけれど、十番隊の隊長で槍の使い手。
そんな凄い人が、のんびりとこうして団子を食っているのを見ると、なんだか拍子抜けしてしまう。
そして右を向けば、
「ぱ…ぱっつぁん。」
「よお、左之に平助ェ。良いもん食ってんじゃねぇか。」
いましがた帰って来たのか、浅葱色の羽織を羽織った新八が立っていた。
「お、お前いつの間に帰って来たんだよ!」
いきなり声をかけられて驚く左之さん。
「あ?俺が帰ってきちゃあ悪いってぇのか?上手そうなもん食ってんじゃん、俺にも寄越せよお。」
そう言って新八が手を伸ばす先にあるのは、残り一本の団子。
「あー、駄目だって!この団子、俺が貰ってきたんだから俺が食う!」
必死に団子を守ろうとする平助。
「駄目だ。俺は午後から巡察があるんだよ。今のうちに体力つけとかねぇと…」
無理な言い訳を通そうとする左之。
「おめえらだけずりいぞ!俺にも一本くれ!」
がむしゃらに手を伸ばし、団子を掴もうとする新八。
するとそこに、長髪の男が。
「あ、総司。」
「ふふ、皆さんなんだか楽しそうですね。」
長い髪を風になびかせ、穏やかに笑う沖田。
そしてその口元には。
「あー!俺の団子!」
「い、いつの間に…!?」
「なんだとー!」
唖然とする三人組。
「こういうのは、早い者勝ちですよ。」
沖田はにっこりと笑い、団子の串をくわえたまま去っていった。
「う、嘘だろ。」
「どっから湧いてきやがった。」
「俺、一口も食ってねぇ…。」
沖田の去っていった方角を見つめながら固まる三人を、優しいお日様が照らしていた。