初夏の風、宵闇の舞
□記憶
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「祭り?あぁ良いよ、行ってきな。というか必ず行きな!」
「あ、ありがとうゆき姉。」
真太さんとのお祭りのことを、ゆき姉に言ったら快く許可をくれた。と言うより、必ず行かなければならないらしい。
「じゃあ、水菜に似合う浴衣を用意してやろうか。」
にこにこと笑うゆき姉がいそいそと持ち出して来た浴衣。
「やっぱり水菜には赤が似合うんじゃないかい?」
ばさりと広げ見る。
「綺麗だね。……っ、」
つきん、と、頭が痛んだ。
が、その痛みはほんの一瞬で、直ぐに消えた。
「じゃあ、浴衣はこれに決まり、と。髪飾りはどれにする?」
「え、髪飾りも付けるの?」
「当たり前だろう。折角の逢い引きなんだ、お洒落をしない娘がどこにいる?」
「だ、だから逢い引きなんかじゃないってば!」
ああ、まだ付き合ってなかったんだっけな。
そう言って豪快に笑うゆき姉から、顔を背けた。
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