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□空白。
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「上埜、さん…、?」

 控室のモニターに映る横顔が酷く懐かしくて、胸が痛い。
後輩の子達が用意してくれた牌符を見ても気付け無かった、解らなかった。三年前の上埜さんだと。
今戦ってくれて居る文堂さんに申し訳無く思う気持ちと、何だか善く解らないモヤモヤが混じって、溢れて来る。頬を伝う感覚、涙が――。


 上埜さんは私を覚えて居ない、休憩時間の対局室で確認出来たのはそれだけ。上埜さん率いる清澄高校は団体戦を勝ち抜けて仕舞った。相変わらず、上埜さんは強い。それはもう何で今迄個人戦に出なかったのか、不思議で仕方が無い位で。だけど今年も勿論、個人戦に上埜さんの名前は無かった。
三年間逢いたかった人に逢えたのに、何も話せなかった。何て声を掛けて善いのかも解ら無いまま、県予選は終わってしまった。
 
 
 
 
 
 
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