天魔(エンビル)
□もう一人のドジっ子?
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ネルは町でショッピングをしていた。
「後は…桃です」
ネルは果物屋へ行くため、角を曲がった。その時、誰かにぶつかってしまった。ネルが持っていた紙袋の中身が飛び出す。
「ご、ごめんなさいです!!」
「す、すみません…!!」
茶色の長い髪を三つ編みに結び、頬にそばかすがある天使の女の子は、落ちた物を拾い上げた。
「大丈夫ですか?ごれ…どうぞ」
ネルはそれを受け取り、頭を下げた。
「本当にごめんなさいです。そちらこそ、大丈夫です?」
「はい〜、ほんどぉ…すみませんでしだぁ」
ネルはクスリと笑う。
「ネルと申します、なのです。とても個性的な喋り方ですね」
「おら、いながの方がらぎだがらな…、なまってるだ。
あっ、申しおぐれだだ。おら、ユームですぅ。よろしぐ」
ネルとユームは互いに微笑んだ。
ネルは自分の用事を済ませた後、ユームに頼まれ町を案内した。たくさんの店や家、綺麗な町並み、ユームにとっては見慣れないものばかりで、嬉しげに目を輝かせていた。
「おらの村どは大違いだぁ」
「ユームちゃんの村はどんな所です?」
「んだな…、何もない田舎だっぺ。でも新鮮な農作物さ、いつでも食べれるけ不便はないだ」
ネルは瞳を輝かせていた。
「ネル、野菜大好きなのです!」
「良げれば、村にぐるが良いだ!ちょうど野菜の収穫時期だがら」
ネルは満面の笑みになった。
「良いんです?行きます、なのです」
「次はおらが案内する番だな」
ユームは小さな翼を広げた。ネルも翼を広げた。
「おらの村さ、ここから少し西に行ったどごろにあるだ」
「了解なのです!」
二人の小さな天使は飛び立った。
ちょうどネルがユームと出会った頃、ジェルは家で料理をしながら、ネルの帰りを待っていた。いや、むしろ桃を待っていた。
「早くネル様、帰って来ないかな〜。桃のケーキが出来上がりませんよっと」
ジェルはオープンからスポンジケーキを取り出した。柔らかな甘い匂いが漂う。
「う〜ん、良い香り!
さてと、クリームにバニラエッセンスをちょいと入れて、桃のエキスを混ぜ混ぜ〜」
ジェルはウキウキと進めていた。ネルが寄り道しているのも知らずに…。
ネルはユームの村に来ていた。木造の家が立ち並び、畑には沢山の野菜がなっている。周りは森に囲まれ、自然の香りが広がっている。
「とても気持ちいいです」
「ごごがおらの家だべ」
小さな家だが、その家ね周りには大きな畑がある。
「おら、畑仕事も手伝ってるだ!良げれば、収穫作業一緒にしてみるかぁ?」
「はいなのです!」
畑は男性天使と女性天使が、収穫に取り組んでいた。女性天使がユームに気付くと、笑顔となった。
「お帰りなさい!あら、お友達?」
「ただいま!
こちらネルちゃんだ。一緒に収穫してぐれんだ」
「ネルです!よろしくお願いします、なのです」
ネルは早速、野菜の収穫作業を手伝った。
ユームやユームの母親に教えてもらいながら、丁寧に野菜を採った。
「上手くなったべ!」
「そうです?」
ユームとネルは微笑み合った。
「服が汚れちまっただな…。着替えさ持ってぐるけ、ちょっと待っででなぁ」
「大丈夫です…って、行っちゃったです」
ユームは急いで家に戻った。
「ネルちゃんだったがな?今日はよぐきでぐれだなぁ」
ユームの母親がネルに野菜の入ったカゴを手渡した。
「ごれ、少ねぇげどあげるだ」
「あ…、ありがとうございます、なのです!美味しく頂きますです」
ネルの顔は汗や土で汚れていたが、何とも清らかな笑顔だった。
「お待だせ!」
ユームは、たたまれた服を持ち、走って戻ってきた。しかし、小石につまづいて転けてしまった。
「ユ、ユームちゃん、大丈夫です?!」
ネルは慌ててユームに駆け寄った。ネルも小石につまづき、転けてしまった。
「だ、大丈夫?!」
ユームの母親が心配そうにしている傍ら、ネルとユームは大笑いしていた。
「ネル達、何だか似てるのです」
「ほんどそうだぁ」
柔らかい土のおかげで怪我はなかったものの、先程よりも汚れてしまった。ユームが持ってきた服も土がついた。
ネルとユームは立ち上がり、服についた土埃を払った。
「もうユームっだら…。そういえば、ゲーギ買ってぎだの?」
ユームはあっ…と頭に手を乗せた。
「ゲーギって何です?」
「実は今日、ユームの誕生日だっで、この子ったら自分で選ぶって言うがら…」
ネルは驚きの表情を見せた。
「ユームちゃん、おめでとうございます、なのです!ケーキ、買ってくるです?」
「もういいだ。今日は嬉しい素敵なプレゼントと出会えだがらな」
ネルは首を傾げていた。
「ネルの家もケーキでお祝いするのです!今、ジェルっていう妖精が家で…」
ネルの言葉が途切れたので、ユームが首を傾げると、ネルは慌てた様子で自分の荷物をひっつかんだ。
「すみませんです、ちょっと帰らなければなりませんです!野菜ありがとうございました、また会いましょう、なのです」
ネルは飛び立った。それを笑顔で手を振って見送る、ユームとその母親だった。
ネルは急いで自分の家に戻った。空は少し赤みかがっている。
「ただいまなのです!」
ネルは扉を勢いよく開けた。
「……ネル様?」
ジェルは眉間にしわを寄せていた。家は綺麗な飾り付けされており、ほとんどの準備を終えている。
「もうすぐ夕暮れですよ!ったく…どこをほっつき歩いていたんですか?!そんなに服を汚して」
「ご、ごめんなさい、なのですぅ!!」
ほのぼのでハチャメチャなネルの生活は…終わらない。
因みに、ネルの家のお祝い事は、ネルの両親の結婚記念日だったとか。
「それで、ユームちゃんと出会ったのです。ユームちゃん、可愛かったのです」
「ネル様、コーディネートはしませんでしたよね?」
「はいです!リヴちゃんに習いましたです。
会ったばかりでコーディネートしちゃうと、遠慮を感じると。だから、次に会った時にコーディネートするです!」
ジェルは思った。ネル様は成長しないな…と。
微嫉妬(ビシッと)友情!