天魔(エンビル)

□宝石を取っちゃおう!
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冥界の荒れ地、ルーヴとラミは何かを探しまわっていた。

「見つかりませんわね…」

「ここら辺の鉱石は、他の悪魔も採取するからね」

ルーヴはため息をつく。

「困ってるようね」

リヴは何やら嬉しそうな表情で降り立った。ルーヴはリヴをチラリと見たが無視し、鉱石を探し始めた。

「…ちょっと無視するんじゃないわよ!ったく、良いアイデア教えようと思ったのに」

「姉ちゃんのアイデアはろくなことないから、いらない」

リヴは眉を吊り上げた。

「魔界なら珍しい鉱石やら魔石やら、余るほどあるのに。いいわよ、アタイ一人で探してくる」

ルーヴにはリヴの目論みがわかっていた。
どうせ、自分が欲しい宝石を僕や魔獣に探させるんだ。自分は働かずに!

ルーヴは鉱石を探し続けた。



「ちぇっ、綺麗な宝石が手に入る場所を見つけたって情報が入ったのに」

リヴは魔界に来ていたが、探すのが面倒臭いのか、躊躇っている。

「そうだ!こういう時こそ」

リヴはにやけた。



ネルは家の近くを散歩していた。青空が広がる中、暖かい風が吹き、ネルの頬をくすぐる。

「とても良い気分なのです」

ネルの目の前にいきなりリヴが現れた。

「キャッ!」

「えっ?!」

二人はぶつかってしまった。

「イタタ…、ごめんなさいなのです。…あっ、リヴちゃん!」

「ネル!もぉ痛いわね…。気をつけてよね」

気をつけなければならないのはリヴの方だが、それはさておき、リヴは話を切り出した。

「ネルは魔界に行ったことある?」

「ありません、なのです」

「ちょうど良いわ!一緒に魔界へ行きましょうよ。頼みたいこともあるし」

ネルは笑顔で頷いた。



ネルとリヴは、『世界の門』と呼ばれる扉から、魔界にやってきた。魔界の空は雲で覆われ、少しどんよりとしている。

「アタイね、魔界とは結構交流してるの。町を案内するわ」

「はいです」

魔界の町は、周りの家屋が崩れていたり、古ぼけていたり、廃れている印象だ。人通りも少なく、まるでスラム状態である。
リヴは一つの家に入った。今にも壁が崩れそうなくらいにひび割れている。

中には、尖んがり帽子をかぶった猫が座っていた。

「ト・ギャランの情報屋敷へようこそニャン!リヴ、久しぶりだにゃ」

「久しぶりね!今日は…」

ギャランはリヴの話に聞き耳を立てず、ネルの側に駆け寄った。

「君はまるで儚い小さにゃ桃の花のように美しい。おいらと付き合わにゃいかニャ?」

「え…?は…はぁ……」

ネルが困惑していると、リヴがすかさずギャランを殴る。

「人の話を聞け!この女ったらし」

ネルはパチクリと目をまばたきさせたのだった。



「ここだニャン」

ギャランは地図を広げ、地図のある場所を指差した。

「ありがとうね、ト・ギャラン」

「宝石探しなら、ド・クワロフも連れていくと良いニャ!あいつは鼻が利く」

ギャランは部屋の奥に入っていった。

「宝石を探してるです?」

「実は…、宝石を落としちゃったの。それが結構な量でね…。だから、一緒に探して欲しいってわけ」

「わかりました、なのです!」

リヴは、少し苦しい嘘だなと思った。


ギャランは尖んがり帽子をかぶった犬、クワロフを連れて来た。

「リヴはん、久しぶりやなぁ」

「相変わらず、パシリやらされてんだ?」

クワロフの服は汚れ、ボロボロになっている。

「それは言わんといてぇな。それより、隣の女の子は誰や?」

ネルは一歩、前に出てお辞儀した。

「ネルです。よろしくお願いします、なのです」

「わいはド・クワロフや。よろしゅうな」

ネルはギャランにもお辞儀した。

「情報ありがとうございますです!えっと…、トさん」

「ト・ギャランだニャン!きちんとフルネームを呼ぶのが礼儀だニャ」

ネルは慌てた様子で頭を下げる。

「ごめんなさいですっ!ト・ギャランさん」

リヴとクワロフはクスリと笑った。



ネル、リヴ、クワロフの三人は、地図でギャランが指差した場所にたどり着いた。

「ディブ、ベル、アンタ達の出番よ」

リヴは指を鳴らした。すると、リヴの隣にディブとベルが現れた。

「リヴ、どしたんだ?」

「ここに綺麗な宝石やら魔石やら、価値のある石がたくさんあるの。だから、よろしく」

ディブは頭にハテナを浮かべていた。

「よろしくって…何を?」

「要するに、アタシ達に宝石を見つけてこいと。そうですね?」

ベルの確認にリヴが頷いた。ディブはがっかりしていた。

「戦いじゃねぇのかよ…」

「それでは、探しに行って参ります。行くわよ、ディブ」

「へいへ〜い」

ディブとベルは探しに行った。リ ヴは魔法で椅子を出し、それに座った。

「アタイのために頑張ってね、皆」

ルーヴの考えは図星だったようだ…。


クワロフは宝石の臭いをかぎ分け、次々と宝石を集めている。

「大量やワン!」

宝石の何個かを自分の懐に入れ込むと、すかさずリヴの眼が光る。

「ド・クワロフ…?」

ギクリッと体を震わせながら、クワロフは振り返った。怒りの表情でリヴがこちらを睨んでいる。
仕方なく、クワロフは懐に仕舞った宝石を出し、籠にいれたのだった。


ディブはあちこちを適当に掘りまくっていた。しかし、全く見つからない。

「ハァ、しんだいな…。おい、ベル!ちゃんと働けよ」

ベルは地面や岩をじっくりと眺めていた。

「適当に掘るより、よく観察して掘ると…」

ベルは一カ所を掘っていく。すると、そこから宝石が出てきた。

「でしょ?」

「…めんどぉ」

ディブは顔をしかめた。


ネルは一所懸命に探していた。しかし、一向に見つからない。
ネルは魔法書を開き、そこに書いている呪文を読んだ。

「エンジェラエンジェラ、シアーチャクル」

この呪文は、捜し物がどこにあるのかを光で示す魔法であり、ネルから光が出て示す…はずだった。
ネルから光が全く出て来なかった。

「あ、あれ?エンジェラエンジェラ!!」


一気に光がネルの手の平から溢れ出た。光は四方八方に飛んでいき、クワロフやディブ、ベルを襲った。

「あわわっ??と、止まらないのですぅ!!」

ネルは光を制御できず、困り果てた表情で立ち尽くしている。

「はよ止めぇや!」

クワロフは必死に光を避けていた。

「あのバカ天使…!」

ディブはネルに近づき、力ずくで止めようとした。しかし、光が強すぎて近寄れない。

「ど、どうすればええんや?!」

「デビュラデビュララ!」

ネルから溢れていた光は、突然消えてしまった。

「本当に…簡単な魔法もできないなんて。呆れるわ」

リヴはやれやれとため息をつき、ネルに近づいた。

「…ごめんなさい、なのです」

ネルはしょんぼりとうなだれた。

「でもまあ、アンタのおかげで見つけやすくなったんだけどね」

地面を見ると、キラキラと光る物が落ちていた。ネルの魔法を受けて、輝き始めたのだ。

「ヒャッホー!!取りまくってやるぜ」

「ちょっとディブ、アンタの馬鹿力で宝石壊さないでよ?!」

魔獣二匹は探索を始めた。

「ドジも幸運を呼ぶみたいね」

「はいです」

ネルとリヴはクスリと笑った。



リヴはウキウキ気分で家に帰った。腕の中には、篭いっぱいの宝石があった。

「おかえり」

ルーヴは先に家に戻り、椅子に座ってジュースを飲んでいた。

「こんなにたくさん手に入っちゃった!分けてやんないからね」

「そんなのいらないよ。僕はこっちがあるから」

ルーヴは大きな鉱石をリヴに見せた。

「魔水晶っていうレアモノ」

ルーヴは冷ややかに笑った。リヴは自分の宝石を見た。綺麗だがレアモノではない。

「…なんか悔しい」

「言っておくけど、これは売らずに発明の材料に使うからね」

ルーヴは鉱石を持ち、地下にある研究室へ行った。
ラミはリヴを嘲笑った。まるで、ルーヴ様の方がスゴイのよ、わかった?と言っているようだ。

「ほんとムカつく!!発明なんて失敗すれば良いんだわ!フンッ」

リヴは集めた宝石を眺めた。



ネルは天界に戻り、宝石を眺めていた。リヴから一つ貰ったのだ。

「リヴちゃん、優しいのです」

ネルは嬉しそうな表情で家に戻った。


次の話→だるいイルダの失態?

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