天魔(エンビル)

□堕天使の偵察
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晴れ渡る青い空の下、草原の真ん中でネルとジェルはいた。

「ネル様、止めておいた方が良いのでは?」

ジェルが見守る中、ネルは魔法書に書かれている魔法陣を描いた。

「水の精霊、召喚なのです!」

魔法陣は輝き出した。しかし、魔法陣は水ではなく雷を放っている。

「な、何故です?!」

「僕にもわかりませんよ!」

雷はやがて天空に舞い上がり、黒い雲を作った。そして、その雲から雷が落ちた。

「キャーーッ!!」

「ネル様〜っ」

二人は互いに抱き合い、怖がっていた。その時、突然黒い雲は散り、金髪の女の子が魔法陣の上に浮いていた。

「誰です?」

「あなたがネルですね?私はヴィリア。よろしくお願いします」

ヴィリアは地面につき、ネルに歩み寄る。

「ヴィリアさん…でしたね?どうしてネル様の名前を知ってるんですか?」

「そんなこと、どうでもいいの、です!」

ネルはジェルを突き飛ばし、ヴィリアの腕を掴み走り出した。
ヴィリアは少し驚いた表情だ。

「どこへ行くんですか?」

「ネルの家でコーディネートするのですぅ!」

そのまま、ネルはヴィリアをつれて行ってしまった。

「ヴィリアっていう人、なんか怪しいな…。誰かに知らせないと…」

「ダ…メ……」

ジェルは突然、眠気に襲われて眠ってしまった。

「真夜…中の…、闇で…、ぐっすり……と…おや…す…み」

つぎはぎのぬいぐるみ、ヴァンプはニヤリと笑う。



ヴィリアは、青いドレスから桃色のフリフリドレスに着替えさせられていた。

「可愛いのです、可愛すぎるのです、もう最高なのです!」

「ありがとうございます!あの…、お礼できなくてすみません…」

ネルは首を大きく振った。

「これはネルの趣味なのです!」

「へぇ、おかしな趣味」

二人は互いに笑い合った。

「ネルちゃん、私ね、実はリヴちゃんのお友達なのです」

「そうなのです?だから、ネルを知ってたのです?」

ヴィリアは笑顔で頷いた。

「今度はリヴちゃんもつれてくるから、楽しみにしてて下さい」

ネルは大喜びしていた。ヴィリアはその様子を微笑ましく見ていた。

「リヴちゃんってね、ナメクジとかカエルみたいなヌメヌメしたものが苦手のようなんです」

「えぇ?!ナメクジは…ともかく、カエルは可愛いのに、残念です」

本当ですねと、ヴィリアは口元に手を当て、静かに笑った。

「ネルちゃんは何か苦手なものあるんですか?」

ネルは考えた。顔を少ししかめる。

「その…名前も呼びたくない大嫌いなものがあります…です」

「あら?聞いてみたいけれど…、話したくない表情ですね。聞くのは止めておきます」

ネルは申し訳なさそうな表情で俯いた。

「ネルちゃん、あの…私ね、あなたとお友達になりたいのです。だから、あなたのことたくさん知りたいな…と思いまして」

ネルは顔を上げ、目を輝かせた。

「もうお友達なのです!ネルもヴィリアちゃんのこと、知りたいのです」

「今日はたくさん、お互いのこと話しましょう」

「はいです」


話が盛り上がっていると、いつの間にか日が暮れていた。

「時間って早いですね。もう帰らなければなりません」

「本当です!ヴィリアちゃんの家族が心配するのです」

ヴィリアは一瞬、瞳が曇った。しかし、ほんの一瞬のことだったのでネルは気付かず、二人は立ち上がり、家の外に出た。

「今日はありがとうございました!また来ますね」

「こちらこそ、ありがとうございます、なのです!バイバ〜イ、なのです」

ヴィリアはネルに手を振り、そのまま飛び立った。ネルは幸せそうな笑顔で見送った。



ヴィリアは帰り道に、天空を見上げた。太陽は沈みかけ、空は赤と青が混じっている。

ヴィリアの綺麗な金髪が、銀色に輝き出す。そして、 青い瞳から赤い瞳へと変わった。ヴィリアは魔法で服装を替え、ドクロのついた赤いリボンに、黒いドレスに身を包んだ。


そう、これがヴィリアの本当の姿だ。

「確かに、いたずらの材料ねぇ」

ヴィリアは口元を少し上げ、欠けた翼を広げた。

「ヴァンプ、帰ってきなさい。もう眠りは解いていいから」

しばらくすると、ヴィリアのそばにつぎはぎのぬいぐるみ、ヴァンプが現れた。

「ヴィリア…さ…まの、役立つ…う…れし…い」

ヴァンプは不気味に笑った。

「あなただけが信頼できる下部(しもべ)だわ、ありがとう!
後でご褒美あげるからね」

ヴィリアは、そのまま闇に帰っていった。




「ね、ネル様〜!!」

ジェルは寝ぼけた目をこすり、ネルの元へ急いだ。

「ネル様、大丈夫ですか?」

ネルはキョトンとした目をしている。

「ジェル、どうしたのです?」

「ヴィリアっていう人に、なんかされませんでした?」

ネルは満面の笑顔で答えた。

「ヴィリアちゃんとお友達になりました、なのですぅ」

ジェルは驚いた。

「もし危ない人だったらどうするんですか?!」

「大丈夫なのです!」

ネルの大丈夫という言葉を信用できないジェルなのだった。



ヴィリアは冥界で亡者の魂を口にしていた。ヴァンプもまた、大きな口を広げ魂を食らっている。

「お…いし……い」

「そうね!」

ヴァンプのしっぽについている水晶玉がキラリと光る。

「おーい!」

ヴィリアに呼びかけ、近づいてきた者がいた。それはリヴだ。

「どうだった?なかなか良いいたずらの材料でしょ!」

「えぇ、あのドジっぷりと天然さには笑えたわ」

二人ともネルを嘲笑った。

「で、早速いたずらしたの?」

「言ったでしょ?ちょっと様子を見てくるだけって。でも、良いいたずら方法思い付いたの」

ヴィリアはリヴに耳打ちした。その計画を聞いて、リヴは少し震えた。

「ほんと、アンタって悪魔より悪魔ね…」

「ありがとう」

ヴィリアは冷ややかに笑みを見せた


ヴィリアの考えるいたずら方法とは、一体……?


次の話→双子の魔獣騒動?!

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