作品1

□第四回企画『寂しさ』
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「…寂しい」
最近、彼女がことあるごとに発する言葉が、これだ。それはかなり唐突で、例えばテレビを観ていてゲラゲラ爆笑した後だとか、二人して散歩に出かけて大きな大きな虹を呆然と眺めていた時だとか。
何かを落っことしたかのように、彼女は呟くのだ。
「…寂しい」
と。
「僕がそばにいるのに?」
そう問いかけても、曖昧な笑みしか返っては来ない。僕は、苛立ちが積み重なっていくのを感じた。
何故?
彼女には僕がいるのに。
僕には彼女がいて、彼女には僕がいる。
それだけじゃ、駄目なのか。
彼女が分からない。
分からない分からない分からない!
それがどうしようもなく、
「…寂しい」
と感じた、朝と夜の隙間。
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