作品1

□第二回企画『卒業』
1ページ/1ページ

校門の前、沢山の卒業生と在校生でごった返している。
あたしは一人、下駄箱の前にいた。

「あれー?雅じゃん。何やってんの。」
「望。」

幼なじみの望は花束と上履きを手に持って、何故か外から入ってきた。

「いやー、参っちゃうよ。俺、人気で。」

そう言う望の学ランには一つもボタンがついてなかった。
どうせ野球部の後輩だろうけど。

「はいはい。良かったね。」

あたしは憎たらしく言った。
あたしとコイツはそうゆう関係。

最後まで思いを伝えることはなかった。


「俺、第二くれって言われちゃった。七瀬に。」

あたしはドキっとした。
七瀬とは隣のクラスのアイドル。
可愛らしい子だ。

望がそんなふうに思われてるとは知らなかった。

確かに望の第二ボタンはついてない。


「ふ、ふーん。良かったじゃん。」
「んー。」
「で?告られたの?」

ヤバい。泣きそうだ。


「あげなかったよ。」
「は?」
「だからあげなかった。」
「なんで?」

「ほら。」

そう言い望は左手を差し出した。
あたしが右手をだすと、その上にボタンが落ちてきた。


「な、んで、」
「いやー、雅、絶対誰からも貰わないと思って。かわいそうじゃん?」


だから戻ってきたのか。


嬉しくて少し涙が出た。


「ばーか」


歩きだした望の背中に言葉を吐くと、望は照れくさそうに笑った。



戻る


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ