作品1

□第四回企画『寂しさ』
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――う゛ん



機械が回る音。何かと思って、よく考えて、ああ、と声を漏らす。

機械は僕だった。

調整中なのか。僕から出る細い管。その中を通る透明な、粘着質な液体は、とくとく、とくとくとくとくとくとく、僕に注がれていく。たまに、気泡の弾ける音。その心地よさから、眠気に襲われる。


「――起きたのか。」

無機質な部屋の隅から投げ掛けられたその声は、どこか独りの僕を哀れむような、そんな声。

首を回してみると、管がぐわん、と捻れた。でも中の液体はちゃんと流れ続けている。それと一緒に、視界には黒縁眼鏡の白衣を着た男。


「お前は、俺に会うのは初めてか?」


「…そのはずです。」

喋るたびに、吐き気がする。体の中であの透明な、粘着質な液体が、ぐるぐるぐるぐる回っているのかと思うと、それは更に強まった。
しかし、彼ともっと話したい、と思った。彼の白衣から伸びた手首に触れたいと思った。


「あまり、喋るな。…それと、お前はこれから解体されるんだ、」

「…解、体。」


「残念だがな、」




ああ、何て残酷で愛しいのだろう。僕はずっと独りだった。この人ともっといたかったような気がする。

やがて、彼は僕に白い小さな花を渡して、この無機質な部屋の隅から、立ち去った。







独り、寂しさを空気と吸った。







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