Novel

□狂気連鎖
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「あんたなんかサイテーだっ!」
もう、傷跡すらも残っていない左手首がジクリと痛んだ…
「そんな奴だなんて思わなかったっ!」
また切ってくれと言わんばかりに綺麗な手首が疼いた…
「私の前から消えてっ!」
その言葉は僕を狂わせて堕とすには充分過ぎた。
剃刀で深く、深く切り付ける。
赤い液体が…赤い血が僕と君との間を染め上げる。
痛い…でも、まだ足りない…
また僕は、深く、深く切り付ける。
また、赤い血が飛び散り世界を染める。
「嗚呼…赤いね?」
君は恐怖に引き攣った顔で泣きながら弱々しく首を振る。
「赤いね?」
剃刀は僕が持ってる。
鈍い光を放とうとあがいてるけど、全て赤に飲み込まれた。
なんと滑稽。
「痛いね?」
君は一瞬判らないって顔をして、首を振った。
僕は自然に口元が緩むのを感じた。
それを見てさらに君は怯える。
痛いね…僕だけこんなに痛いのは不公平じゃない?
僕が一歩足を進めるたびに君は、後ろへ下がってく。
滑稽さが可笑しくて、笑いが込み上げて来た。
「もう、逃げられない…よ?」
僕は君の首に深く、深く…
深く、深く、深く、切り付けた。
僕と同じ液体が、僕と同じ温かさを持って、噴き出した。
嗚呼…心地良い…
もう、ジクリと感じた痛さもなくなり、
心地良い痛みと、
温かな血と、
白くなっていく君の躯…
ふふ…
嗚呼、なんと恍惚…


第一夜   〜了〜
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