太陽

□太陽 2
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…チャンミンの寝顔を見つめているうちに眠ってしまったけど
何故か浅い眠りで朝早く起きてしまう

傍らのチャンミンはまだ夢の中だ
起こさないようにカーテンは閉めたまま…それでもスペインの陽光は強烈で

起きちゃうかな、と思っていると目が覚めて…見られているのに気付いたらしくシーツごと背中を向けた

僕は笑った


垣間見えた横顔が首もとまで朱に染まっていたので…

今日は教会の撮影

チャンミンには言わない僕の秘密

いつも教会で祈る時には自分の事
家族の事東方神起の事とは別に

チャンミンのことを祈る

体調がいいようにとか一人の仕事があれば上手くいきますようにとか

そして出来るなら

…僕と共にいて欲しい

でも最後には誰と何処にいても心から幸せであるように

ただ僕がそうして祈るたび

最近チャンミンは不安なつらそうな顔をしたりするので何故だろうと思う

色々な経験…様々な想いをして神様なな祈って叶えられなかったからといって信じる心まで失いたくない

でもそれは闇雲に祈りさえすれば願いが叶うとかでなく

そのために最大限努力して出来ることを全部した上で残りの1%
自分ではどうすることも出来ない何かを祈るだけ

…となりのチャンミンは教会に来てからやはり何かきごちない
問いただすと


「…どうせ祈っても」


と出ていってしまった

僕は悲しかった


…叶わなかった祈り

痛いほどその意味を知っていたから



食事の時間になってもチャンミンは不機嫌…というか僕にだけ態度がおかしい

普段ステージ以外では決してブラックだったり毒舌だったりしないのに何だか妙に突っかかってくる

腹が立つ…というよりは心配になって

「どうしたんだ?」


「…べつに」



聞いたら立ち上がって出ていってしまった

向かいのマネージャーになんだ?と目線を上げて問いかけられ肩を竦めた


「…教会で喧嘩でもしたのか」


「してないよ…なんでですか」

 
午後教会から出てきたチャンミンと会ったという

苛々しているから聞いたらユンホは馬鹿だって

…僕は苦笑した

あんなに努力して限界まで頑張って…神様がいたらもうとっくに全ての願いか叶ってるはずだ…そうでなきゃおかしい…それなのに馬鹿みたいに人の事なんて祈ってるから、なんて言ってたぞ


そんな風に思っていたなんて…
でも僕はチャンミンの事を祈ってるとは言ってないのに、と思っているとマネージャーが続けた

ユンホはチャンミンの事を祈ってるんじゃないか?ってきいたら

それはありません、て

わからないだろ?と聞いたら本人に聞いたって言うんだ


…僕は絶句した

そんな事言うわけない、と言おうとして思い出す


あの日病院で

誰かに強く手を握られて目覚めた時…

仕事を忘れ寝食を忘れ

祈ることすら忘れた怒りや絶望の中

薄暗い世界に突然現れた優しい光



…チャンミンだった

僕は確信した

バラバラになった心も身体も魂さえ
チャンミンとなら

お互いに壊れてしまったこのかけらを拾い集めていけるだろうと…


その日久々に祈りを捧げた


自分だけでない…チャンミンやもう道は違ってしまったけど大切な仲間

僕を信じる人にも悪くいう人にも


全ての人に…






もう二度と誰かの為に…自分の為にさえ祈る事はないと思っていたのに

チャンミンになんで祈るのかと聞かれ


皆の為だよ





…みんな?と聞き咎められる


向き直ってそうだよ、と告げた



チャンミンは静かに行ってしまい


でもそんな風に思える心を取り戻してくれたのはチャンミンだって伝えないまま



…他に誰の事を祈るって?

マネージャーに中座を詫びてホテルを出た

あの時無理やりにでも話を聞かせれば


大体いつになったら僕を信じて…


僕の好きな人、愛する人は君だけだって何度も言っているのに

皆のための祈り…それは僕が救われたからだ


そして僕を救ったのは


ただ一人チャンミンの存在だった…


時計を見ると1時
まだまだ人の姿が見える…夏の宵だ

考えてみたらチャンミンの行き先すら知らない

急に心配になる

絡まれたりしてないだろうか?
気分が悪くなったり…それに

誰かと一緒だったら…?

こう考えるだけで全身にカッと熱が走る

思わず走り出して片っ端から店のドアを開けて

多分そんなに遠くには行っていない…すぐに近場で飲み初めたはず


意を決して賑やかな通りに向かうと感じる視線…チャンミンが通りの向こうから僕を見ていた


「チャンミナ!」


動くなよ、と合図して思わず駆け足になる…会ったら言いたい事か山ほどあったのに…実際顔をみたら霧散してしまった


無言のまま手を取って歩こうとすると動かない

振り返るとごめんなさい、と謝られた
顔は下に向けたまま消え入りそうな声

いいんだよ!と叫んで抱きしめたかったけど

…人もいるし嫌がるかな、と思って黙って歩き出す

「…気がすんだ…?」


と聞くとまだだと言う…その上信じられない事を言いだした


「今すぐキスして…」

驚いて頭が真っ白になる…酔いに任せた言葉に乗っていいか悩んだけど

そんな戸惑いは一瞬で消えた

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