リクエスト&拍手御礼の部屋

□【TRIANGLE〜狂愛の華〜】
2ページ/13ページ

想っても想っても、決して叶うことのない恋.......

どれ程身を焦がそうとも、その心には入りこむ隙間はない。

どんなに俺が熱い視線を送っても、その瞳はたった一人だけを追って。


常に讃える優しい微笑み。

俺に向ける笑顔はいつだって綺麗で、屈託のない笑顔。

だけど咲き誇る花のような満開の微笑を向ける先には.......


分かってるよ。

どんな足掻いても決して届かない想いだって事。

その心を永遠に占めるのは、ただ一人......あいつだけだって事も。

気持ちを打ち明けたら、きっと瞳を曇らせてしまう。

困らせる事はしたくないから。

傍で見守ってるだけでいい、そう思ってた。

だけど.......

一緒にいればいるだけ、想いは膨らみ続けていく。

抑えきれない程に。



“俺のものにしたい”


爆発寸前の衝動はもう限界を越えてた...........









「何かこうして4人で集まるのって久しぶりですね」



綺麗に片付けられた部屋に嬉しそうな声が穏やかに響く。

珍しくゆっくりと連休のとれた週末。

蔵馬の部屋には“久しぶりに飲み明かそう!”と4人の仲間が集まっていた。


発端は幽助からの電話。




「桑原の奴がようやく試験が終わったみたいでよ。あいつ慣れない頭使うもんだから、ストレス溜まってやんの!!みんなでパ〜っとやんねぇ?」



二つ返事で“いいですよ”とにこやかに電話を切った数時間後には、大量のアルコールが室内に運び込まれてた。

4人で飲むには多すぎるんじゃないか?と思うほどの量。
それを飲みきってしまうんだから......

そして毎度の事ながら、己の限界を過信してるウワバミ軍団は、飲むだけ飲んで酔いつぶれる。

【散乱】という言葉では足りないほど、散らかりまくった部屋を後片付けするのは.......



“今日も片づけが大変なんだろうな.......”


目の前のアルコールの山に小さな溜め息が洩れるも、その顔は楽しそうで。

お互いの進むべき道が分かれても、強い絆で結ばれた仲間達。。

何年たとうが、こうして集まって過ごせる時間はかけがえのないもの。


大切な仲間だから........



目の前で“飲むぞ〜”と勢い込む幽助と桑原に思わず吹きだしてしまう。

フッと視線を隣に移すと、何やら仏頂面が目に飛び込んできた。

片手で頬杖ついて、あさっての方を向いたまま。




(もう.....幽助達が来るといっつもこうなんだから)




「ねぇ、飛影ってば.....そろそろ機嫌直しましょうよ?」



蔵馬としても、飛影の不機嫌の原因が分からぬ訳ではない。

2人を隔てるのは途方もない距離と、思うように会えない時間。

人間界に来た時ぐらい2人っきりで過ごしたいと思うのは当然の事。


それでも【仲間と過ごす時間】の大切さも分かってほしくて、ついつい誘いを拒めずにいた。


“恋人”と“仲間”


どちらも比べれない程大事な存在。

だけど、今この瞬間に最優先すべきは、ご機嫌斜めの黒龍使い。



テーブルの下でソッと手を重ね合わせた。

顔はそっぽを向いたまま、ピクリと肩が反応する。


指をキュッと絡ませ、小さな声が囁いた。




「飛影.....幽助達がつぶれたら、しっかりおつとめ果たしますから......だから今日は程々にしてて下さいネ」



飛影だけにしか聞かせないように声を潜めて紡ぐ甘い囁き。

無邪気な誘惑に乗せられ、振り向いてしまったら負け。

分かってはいても振り向かずにはいられない。


それでも渋々という雰囲気だけは出しながら、流した視線。

そこに居たのは、顔を薄紅色に染め、片手で口元を隠した微笑ましい姿。


誘いをかけたクセに、発した言動に恥ずかしくなったのか目線は宙を泳いでて。

不機嫌なんて遥か彼方に飛び去ってしまい、残ったのは溢れる愛しさ。


ポンッと軽く頭に手を乗せ、クシャりと赤毛を指先でかき混ぜた。




「分かった」




たった一言の返事でも、込められた意味を理解したのか、嬉しそうに首を竦める。


まるでそこだけが別世界、そんな空気が2人を包み込んでいた。


嫉妬の炎が燃え盛る瞳が、ジッと見つめている事など気付く由もなく..........





********************************




高らかな乾杯の音頭と共に、グラスが鳴ってから数時間。


豪快に飲み進める酒豪たちには、まだまだ宵の口。

並んだ酒瓶が半分以上空になっても、顔色一つ変える事なく次々と空瓶が増えていく。


一人を除いては..........




「ん〜。飛影ぇ〜......な〜んかフワフワしてきました〜」



めっきりアルコールに弱い蔵馬にしては飲みすぎたのか、顔を真っ赤にしてすでに呂律が回っていない状態。

グデ〜っと伸びきった身体を横たえ、膝の上にゴロゴロと頭を摺り寄せ甘える姿はまるで愛らしい子猫のようで。




「相変わらず酒に弱いんだなぁ」



呆れ顔の桑原の目に入ってのは酎ハイの空き缶が2本。

それも桃だのサクランボだの、これまた可愛らしい味ばかり。


“ん〜”っと気持ちよさそうに飛影の膝に顔を埋めていた蔵馬がガバっと起き上がった。

テーブルの上に目をやり、ニコ〜っと微笑み手を伸ばす。




「あ〜、飛影ぇ、イチゴ味ですって〜.....美味しそう〜♪」



掴みかけた缶が目の前からスッと消えた。




「お前、もうこの位にしとけ」



「あ〜、もう飛影ぇ〜俺のお酒〜.......」



取り上げられた缶を取り返そうとするも、フラフラ状態の身体は言う事を聞かず。

景色がグルグルと回り始める。

クテっと倒れかけた身体は、まるで綺麗に計算されたかのように包帯の巻かれた右腕にスッポリと収まった。




「ほら見た事か。いくら甘くてもジュースじゃないんだぞ。これ以上はやめとけ」



「んっ....飛影がそう言うなら.....やめ......る.......」




素直に従う言葉も最後までは声にならず。

聞こえてくるのは小さな寝息。

回された腕に全てを預けきった寝顔に、フッと空気が優しく揺らめいた。



------幽助達が潰れたら、しっかりおつとめ果たしますから------



言った本人が真っ先に酔いつぶれては元も子もない。




「相変わらずどこか抜けてるな、お前は」



口調は呆れてても、包み込む腕には優しさが溢れていて。

膝を枕代わりに熟睡する蔵馬を横たわらせる。

脱ぎ捨てられたマントでフワリと無防備な身体を覆った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ