黒龍の章〜飛影×蔵馬〜
□【願い事一つだけ】
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今日が終わっちゃう------
飽きもせず見上げた夜空からは、止む事のないシャワーが降り続いている。
相変わらずどんよりとした空気が周囲を包み込む。
晴れたら逢えそうな気がしてた.....
最後の最後で灰色の雲が消えて、満天の星空に輝く川が流れるんじゃないかって.......
ふと部屋の時計を見ると0時をまわっていた。
----逢いたい-----
小さな願い事は雨に流されて叶わなかったけど。
「あなた達は大丈夫だね」
雨で天の川が氾濫したらカササギが恋人達を繋ぐ架け橋になる......
夜空の彼方の恋人達に想いを馳せた。
一年に一度必ず逢える約束と......
約束のない数ヶ月の時間と.....
きっと時間の長さは問題じゃない。
たとえ数ヶ月でもいつ逢えるか分からない不安が、待つ時間の感覚を大きくする。
----今すぐ逢いたい-----
強まった雨足は開けた窓にも入り込み、弾かれた水滴がそれでも窓辺から動こうとしない蔵馬に跳ねかかる。
これ以上は本格的に濡れてしまう、とようやく窓を閉じようと伸ばしかけた腕が止まる。
----願い事叶った.....------
飛び込んで来た漆黒の影が蔵馬を包み込み強く抱きしめた。
勢いそのままに身体が後方に倒れていく。受け身の姿勢を取ろうともせず、蔵馬の腕が影に絡み付いた。
「すまん....お前まで濡れてしまうな」
スローモーションで流れる景色の中、囁く声に静かに首を振る。
僅かな振動すら与えられず気付いたら天井を見上げていて。
視界はすぐに燃えるような緋色に染まり、降ってきたのはkissの雨。
こんな雨ならいつまでも降り続いて欲しい........
その願いを反映するように止むことのない口付けは徐々に深まり激しさを帯び、同時に揺らめく炎が二人を包み込み、濡れた身体を乾かしていく。
「ン....ふっ...ふっっ...ん」
甘く激しく絡み付く口付けと、身体中を愛撫するように流れていく炎が、押し殺せない快感の波を呼び起こしていく。
「んっっ...ふっ...」
不足し始めた酸素に軽く身をよじり、首を振るとようやく重なった唇が離れた。
名残を残す銀色の糸はあたかも、恋人達を繋ぐ架け橋のようで.......
「ねぇ飛影....何で来てくれたの?」
逢いたいと願ってた......
口にはしない夜空にかけた願いだったのに......
「強がりのバカな狐がこれみよがしに書いた願いじゃなかったか?"逢いたい......"だったか?」
翡翠の瞳がまん丸く開き、みるみるうちに頬が紅色に染まっていく。
「見てたん.....ですか?」
さも面白そうな笑いが言葉にしない肯定を表す。
「邪眼ってズルい.......」
顔を真っ赤にしながらも、唇を尖らす拗ねた狐にそっと口づければ、すぐに口元は綻びだす。
「躯に休暇申請を却下されてな。本来ならパトロールの時間なんだが......」
言いかけた飛影の言葉がふいに止まる。
なる程な......
----雨ならカササギが橋渡しをするらしいぜ------
乙な事を........
「飛影......?」
急に無言になった恋人に、一抹の不安を帯びた声がその名を呼ぶ。
我に返った緋色の瞳が、不安に潤む翡翠を優しく見据え、額にそっと口付けた。
嬉しそうに綻ぶ唇に再びkissの雨が降ってきた。
その雨は止むことなく身体中に降り注ぎ、甘い吐息が零れ出す。
外を濡らしていた雨はいつの間にか上がり。
快感の波に揺られながら、視線の端に捉えた窓から見えたのは夜空を流れる天の川.......
もしもあと一つだけ願いが叶うなら、この時間を永遠に閉じ込めて-------
貴方の腕の中で.....
Fin.
後書き
本当は昨日UPしたかったのに間に合わず.....
躯姉さん好きだ〜★
蔵馬さんかわゆいな〜(^O^)私なんか短冊に「宝くじ当たりますように」とか下世話な事書いたよ(汗)
あっ、今回出てきたメガネ君は彼ですよ、彼。
2012.7.8 咲坂 翠