黒龍の章〜飛影×蔵馬〜
□【幻影の恋人】
2ページ/2ページ
「えっ?!飛っっ....んっっ...んんっっ!!!」
驚く暇もなく、噛みつくように唇を塞がれた。
貪るように荒々しく舌が絡みつく。
「んんっっ....ふっ...ふあっっ」
半分しか覚醒しきれてない蔵馬が抵抗出来るはずもなく、されるがまま。
口内から離れた飛影の舌が遠慮なしに蔵馬の身体を這い回り、指が下半身をなぞりだす。。
「飛・・・え・・やっっ、やだっっ」
覆いかぶさる身体を押し戻そうとするも、力では飛影に勝てるはずも無く。
その間にも飛影の愛撫は激しさを増し、下半身を弄っていた指が予告もなしに蕾の中に押し入ってきた。
「やっ・・・いやぁぁぁっっ!飛・・え・・・こんなの・・やだあ・・・」
いつもの飛影からは考えられない程乱暴な抱き方に、蔵馬の瞳から涙が溢れ出す。
飛影だってこんな事望んでる訳ではなかった。ただ、やり場の無い苛立ちととてつもない無力感が混ざり合い、気がついたら蔵馬を組み敷いていた。
そうなってしまえば、湧き出る激情を押しとどめることは出来ず・・・・・
「蔵馬・・・お前は俺のモノだ」
得体の知れない不安を振り払うように、蔵馬の身体に己の所有印を刻んでいく。
フッと蔵馬の抵抗が止んだ。
乱暴に抱かれているのに、翡翠の瞳に映るのは哀しみと不安と・・・・いつもの燃えるような炎とは真逆の妖気を纏った飛影の姿・・・・・
見えない何かとせめぎ合い、必死に戦っているような・・・・
堪らなくなって飛影の頭を掻き抱いた。
「飛影・・・・飛影・・・・・・」
何度もその名を呼ぶ声に飛影も動きを止めた。
「飛影・・・・大丈夫だよ。俺はずっと・・・貴方だけのモノだから・・・何も心配しないで」
飛影の頬を包み込むように手を添えてそっと口付け、フワリと微笑む。
「貴方の気が済むまで・・・好きにしていいから・・・・」
曇り一つ無い翡翠の瞳に映るのは疑いようも無く飛影ただ一人だけ・・・
その瞳に過去の幻は見出せない。
何も言わず蔵馬の身体を抱きしめた。
「悪かった・・・どうかしてた」
普段の飛影とはこれまた真逆の素直な謝罪に蔵馬の目が丸くなる。
「飛影・・・本当にどうしちゃったんですか?全然貴方らしくない・・・・」
「・・・・・・煩い」
様々な動揺を見せたくなくて、己の胸に蔵馬をしっかりと仕舞い込んだ。
自分でも滑稽だと思う。
死んだ奴に嫉妬して感情を爆発させるなど。
蔵馬が生きてる限り、奴の幻影は時折その存在を主張するだろう。
その時は果たして冷静でいられるか・・・・
(無理だろうな・・・・)
ただ、それでも翡翠の瞳に映るのが俺だけであれば・・・
いつもと変わらぬ飛影の温かい腕に安心したのか、穏やかな寝息が聞こえ始めた。
抱きしめる腕に少し力を入れ、深紅の髪に顔を埋る。
願わくば・・・この瞬間に心を占めるのが俺だけあるように・・・・・・
fin.
後書き
蔵馬さんの心に居続ける黒鵺ってどんだけの存在だったんだよって思います。
蔵馬さんの愛する人は飛影だけど、黒鵺は好きとか愛してるとかそんな感情とはきっと別次元なんでしょうね。
飛蔵に黒鵺絡ませると何か萌える☆
2012.6.14 咲坂 翠