暗黒の章〜裏への入り口〜
□【消えない鎖】
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「っっっっ。。。あっ、はっ。。ん。。。あんっ。。」
コンクリートの壁に囲まれた殺風景な空間。断続的に聞こえる無機質な機械音と、対照的に時おり漏れる甘い喘ぎ声。
冷たい床に広がるシーツの上にシャツ1枚羽織っただけの白い肢体が、ブ〜ンという重低音が響く度にビクっと揺れる。
後ろに入れられたバイブが絶えず刺激を与え、異物感と甘い快感が交互におとずれる。
「やぁ・・・はっっ・・んっっっ、もっ・・やだっ・・っっっ」
首を振るたび汗ばむ身体に深紅の髪が張り付く。幾度となく絶頂を迎えた己自身は、刺激に慣れる事無く、また新たな射精感が押し寄せる。
「・・・っン、やっっっ!。。。けェっっ・・・ゆう・・・ヶ」
耳障りな機械音が急に止み、部屋の片隅から目の前の妖艶な動きを見つめていた男が、椅子から立ち上がり近づいてきた。漆黒の長い髪がサラリと靡く。
その手には小さなコントローラーが握られている。
「この状況で他の男の名前を呼ぶとは。。。まだ自分の立場分かっていないようだな」
フッと目を細め手元のスイッチのつまみを一気に最大まで捻った。
「ひっ・・・っっ、やっ!やあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
再び襲う振動に身を捩り、狂ったように腰を振る。何度目かも分からない白濁の液体が弧を描き宙に散った。混濁する意識の中で浮かぶのは、いつもの路地で手を振って別れた、想い人の顔。
(幽助。。。。。)
----数日前------
「幽助。今日はありがとう。楽しかったよ」
映画を見て、食事をした帰り道。繋いでた手を名残惜しそうにソッと離して蔵馬は幽助を見上げる。いつもの分かれ道。
「家まで送ろうか?」
毎回お決まりとなってる台詞、それに対する蔵馬の返事も毎回同じ。
「ううん。ここで別れないと離れたくなくなっちゃうから。。。」
少し寂しそうに長い睫を伏せる蔵馬を見て、いつも愛しさが溢れる。
蔵馬の背中と腰に腕を回しその華奢な身体を抱きしめた。微かに震える肩から強がってるのが伝わってくる。
「んな事言われたら、俺のが離れられなくなっちまうじゃねーか」
会おうと思えば会えない訳じゃない。だけど幽助は霊界探偵として何かと忙しい身。蔵馬にだって南野秀一としての生活がある。こうして一日中一緒に過ごせる日はそう多くはない。
いったん離れた身体が再び吸い寄せられ、お互いの唇が重なる。
「ん・・っ、ふっっ・・」
激しく絡みつくのに、どこか優しい幽助のKISS。体を熱くするギリギリのところで唇が離れた。
「んじゃ、また今度な」
「お休み、幽助」
何度も振り返りながら手を振る蔵馬が見えなくなったのを確認すると、幽助はポケットに手を入れ家に向かって歩き出した。
ふと空を見上げると先ほどまで輝いていたはずの月が薄暗い雲に覆われていた。
なぜだか無性に胸騒ぎがして蔵馬が歩いていった方向を振り返る。そこには静かな空間だけが広がっていた。
(気のせいか。。。。。)
フッと肩を竦めると、今度こそ家路についた。