闘神の章〜幽助×蔵馬〜

□【Studying of LOVE】
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「だから、この公式に当てはめて。ほら、答え出たでしょう?」


白く細い指に握られたペンがすらとすらとノートの上をなぞり、一つの答えを導き出す。

難解だと思っていた問題もまるで子供がパズルを解くようにいとも簡単に解かれていく。



-----妖怪じゃなくて魔法使いだな--------



授業を聞いてもさっぱり分からなかった.......むしろ同じ日本語を喋ってるとは思えない程チンプンカンプンだった数学が、教える人によってこうまで変わるとは。




「期末試験で赤点取ったら、夏休み特別補講だからな!!!!!」




不敵な宣戦布告をした教師にとりあえず食ってかかってみたものの、“赤点を取らなきゃいいだけの話”とあっさり尤もな理屈一言で一蹴されてしまう始末。

夏休みに特別補講なんてされたら、貴重な時間が........

かといって、本来の勉強嫌いが故に万年赤点ばかりの頭が急に良くなるはずもなく。

どうしていいか分からなくなって、助けを求めた相手は【貴重な時間】を一緒に過ごす予定のその本人。



「蔵馬〜、勉強教えてくれよ」



珍しい理由での訪問に、大きな瞳を更にパッチリ見開いて驚いていたが、すぐにフワリと微笑み部屋の中に招き入れた。


そこから約2時間近く。

幽助にしては珍しく集中しているのは、分かりやすい解説と........


「この場合はここにこれを代入して、ね?やってみたら簡単でしょ?」


頬杖つき、時々“分かった?”と至近距離で覗き込む瞳は吸い込まれそうな程に透明感漂う翡翠色。

鼻にくっつくギリギリ手前を掠める柔らかな前髪。

身じろぐ度に漂う薔薇の香り。

夢見心地を誘う優しい声。

その全てが今は幽助だけが独占している。

それだけで、集中する理由になるというもの。

これで本来の目的である【勉強】に集中しているのであれば赤点もきっと免れるであろうはずが.........




------マジ綺麗だよな.......---------



幽助が集中していたのは、【勉強】ではなくて隣にいる.......



「もう!!!幽助ってば!ちゃんと聞いてる?」



ボ〜っと見惚れる幽助をたしなめる声にハッと我に返る。



「ん?あっ、ああ....ちゃんと聞いてるって」



「じゃあ、この問題解いてみて。今の説明聞いてたのなら簡単でしょ?」



「うっ.....ん〜、これはだな〜.....う〜ん....」



「やっぱり聞いてない!!」


穏やかな微笑みは消え珍しく眉間に皺を寄せてプリプリ怒っているのだけど、ム〜っと尖らせた唇に、大きく膨らんだ頬では大した迫力にはならず。



-----前言撤回。綺麗じゃなくてやっぱ可愛いだな-------



すでに幽助の頭の中は補講が云々よりも、目の前の恋人の事で埋まっていた。

暢気な幽助に蔵馬の瞳が困ったように揺れる。


「ねえ、幽助。せっかくの夏休みなのに補講なんかでつぶれてもいいの?」


なぜか哀しげに見つめる瞳に、にやけてた顔が真顔になる。


「俺は.....嫌だよ。一緒にいれる時間が減るのは」


寂しさを映し出した瞳にウルウルと見つめられたら、さすがの幽助もおちゃらけてはいられず。


「悪ぃ、蔵馬。真面目にやっから」



姿勢良く座りなおし、ノートを前にシャーペンを手にとった。



「ふふ、やっとやる気になったね」



片目を瞑って悪戯っぽく笑う顔には得意げな表情が浮かんでいた。


“やられたっっ!!!”と思った時には、もう後には引けない状態で。


何事もなかったように教科書の続きのページを開く蔵馬にため息を吐くしかなかった。


【無邪気な小悪魔】-------相克する二つの単語が今の蔵馬にはピッタリ合う。


それでも愛しいなんて思ってしまうのは、惚れた弱みか贔屓目か。


「じゃあ、あとこのページで最後だね」


ん〜っと真剣に教科書を読む蔵馬の首元にそっと手を差し入れた。

いつもなら、フッとはにかんで長い睫で翡翠を隠してしまうのに......


「幽助、おふざけは後からにして」


やんわりとお断りされてしまった。


だからといって差し入れた手を素直に戻すはずはなく。

強く引き寄せるとすんなりと腕の中に倒れこんできた。



「幽助っっ!!ちょっと、真面目に勉強.......っっ......」



身を引くよりも幽助の動きの方が早かった。

一瞬で奪われた唇はすぐに舌までも絡みとられ。



「ん〜っっ!!!」



初めこそ両腕を突っ張り何とか距離をとろうと試みる蔵馬だったが、ガッチリ抱きしめる幽助の力に対抗できるはずもなく。



「ん.....っっ....ふっ....ンっっ」



甘いkissに翻弄される唇から洩れだしたのはkissよりも甘い吐息。



銀色の名残を残し、ようやく二人が離れた時には瞳の翡翠は潤み、力の抜けた身体はたわいなくカーペットの上に組み敷かれてた。



「ちょ....ちょっと!!!幽助!お遊びが過ぎますよ!」



幽助をたしなめてたクセに、甘い口付けに翻弄された自分を叱咤するように抵抗を試みる。



「ん〜?休憩も必要だって」



蔵馬の抵抗を軽々と交わしながら、幽助の顔が至近距離にまで近付いてくる。


ん〜っ、と突き出した唇が桜色の唇を塞いだ........



はずだったのに......
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