闘神の章〜幽助×蔵馬〜

□【雨宿りのLove affair】
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----付き合ってみない?-----



そう言ったのは俺の方。


最初は驚いてたみたいだったけど、


「いいぜ。俺もおめぇの事好きだし」


ニカッっと笑って返事をくれた。



あれから4ヶ月たつけど、恋人らしい事なんて何一つしてくれない。
学校帰りに会って、たわいもない話をする程度。休日に出かける訳でもないし。放課後会ったって、一方的に俺が喋るのを頷いて聞いてるって感じで.....


別に乙女チックな恋愛なんて期待してないけど......
せめて手ぐらいは触れて欲しいな、なんて.....


いつものように、放課後待ち合わせをして、お茶を飲んで。相変わらず幽助は俺の話に相槌を打つばっかり。
優しい笑顔が逆に不安を煽る。


---退屈なのかな---


「そろそろ出よっか」


何だか居たたまれなくなって、早々と店を後にした。


フと見上げた空には灰色の雲が漂い、今にも一雨きそうな気配。湿った空気がどんよりと漂う。

まるで今の蔵馬の心を見透かしてるように。


「ねぇ、幽助?今度の土曜日空いてる?見たい映画があるんだけど......幽助とまだ1度も出かけた事ないから」


「あ〜....悪りぃ、その日は先約あんだわ」


少し困ったように頭をかいた。

いつもそう。出かけようって誘っても、先約だの用事だの。
そりゃあ、友達とワイワイ騒ぎだい年頃なのは分かるし。
でも1回位一緒に出かけてくれてもいいのに.......

一応は恋人同士なんだから。。。


"恋人同士"というフレーズに少しの戸惑いを覚えた。

友達と恋人の違い。
どこで線引きするか、100%の定義なんてない。

キスをもって恋人になるのか、はたまた更にその先か......
じゃあ幽助とは?

今までと何も変わらない。たまに一緒にいる良い友達。
グルグル頭の中で思考を巡らせてたら、何だか悲しくなってきて。。。


(からかわれちゃっただけなのかな.....)


何も言わず前を歩く幽助の背中を見てると、なぜか遠くに感じてしまう。


ポツっ.......


蔵馬の肩に一滴の雫が落ちてきた。
小さな染みを作ったそれはポツポツと数を増やし、気付いた時には大粒の水滴が空から降り始めた。

「やべっ!降ってきた!」


ペッタンコの鞄を傘代わりに頭の上にかざし、走り出そうとした幽助が立ち止まった。

振り返るとそこには学生鞄を両手で胸に抱え、ボ〜っと空を見上げる蔵馬がいた。
濡れるのも気にならないのか、気づいてないのか。


「ちょっ!おい蔵馬!何ボケ〜っと突っ立ってんだよ、濡れっぞ!」


泣きそうな心を見透かしたように、突然降り出した雨。何て抜群のタイミングなんだと空を恨めし気に見上げてたら、幽助に手を引っ張られてた。


「ほらっ!走るぞ!」


初めて繋いだ幽助の手は思ったよりも大きくて、気のせいか汗ばんでいた。


とにかく雨宿りしようと、公園の大きな木の下に駆け込む。


「も〜、突然降ってくるなんて」


雨に濡れて顔にベットリと張りついた髪の毛を引き剥がし、手持ちのハンドタオルで顔に纏わりつく水滴を拭った。

フッと隣の幽助を見ると、雨で濡れたせいか、トレードマークのリーゼントが見事に崩れ、前髪から水滴が幾つも垂れていた。

それが何だか可笑しくて。


「幽助、すごい濡れちゃったね」


笑いながら髪の毛から滴り、顔を濡らす水滴を拭こうと、ハンドタオルを幽助の顔に近づけた。


パンっっ--------

小さな音がして幽助が蔵馬の手を払った。


「あっ・・・悪ぃ」

バツの悪そうな顔をして蔵馬から目を逸らした。

幽助のあからさまな拒絶に蔵馬の顔が蒼白になる。

ギュッと両手を握り締めて、俯いた。
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