闘神の章〜幽助×蔵馬〜
□【優等生な彼】
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「なぁ、浦飯。君が盟王高校の生徒をかつ上げしてるらしいと噂を聞いたんだが、事実か?」
放課後、禿オヤジ教師に呼ばれて渋々行った職員室で尋ねられたら意味不明な質問。
呆気にとられて開いた口が塞がらないとは正にこの事。
盟王高校の生徒なんて幽助の頭には一人しか浮かばず。。。
その人は大事な彼女ならぬ恋人な訳で。
かつあげって......
ポカーンと固まってる幽助に、決まり悪そうに教師の言葉が続く。
「いやな、昨日の夕方うちの生徒が目撃してるんだよ。路地裏で君がその〜、何だ、顔を寄せて何やらしてるのを」
昨日?路地裏?
幽助は脳細胞を総動員して昨日の記憶を辿る。
---昨日は確か学校帰りにたまたま遭って-----
路地裏。。。っ!
あ〜っっ!と唐突に上げた声に教師が驚き、幽助はニヤニヤし始めた。
---路地裏って....キスした場所じゃん----
ニヤける幽助を気持ち悪そうに見ながら、教師の威厳を忘れちゃいかんとばかり最終説教に入る。
「とにかく!誤解されるような行動は慎むようにな。」
当の本人はといえば、よっぽど楽しい事を考えてるのかニコニコしながら、分かったよ!とばかりに手をヒラヒラさせてる。
はあ〜っと盛大に溜め息ついて、頭を振る教師だった。
「アハハハハ〜っ」
乱雑に物が散らばる部屋に、楽しそうな笑い声が響く。
「蔵馬〜、んな笑うなよ」
ぶ〜っとむくれる幽助の前で、翡翠の瞳をクルクルと回して、まだ愉快そうに笑う。
「だって、何か可笑しくって」
文句を言おうにも、小首をかしげてゴメンね、と見つめる姿に怒るに怒れず。
ならば、と蔵馬の手首を掴み勢いよく引き寄せた。抵抗なく素直に幽助の胸にすっぽりと収まる。
「おめぇ、笑いすぎ」
「だって......」
胸の中から顔を上げた蔵馬に口付けが落とされた。
「ん....っっ....」
突然の事に目を丸くするも、すぐに素直に受け入れそっと目を閉じる。
舌を滑り込ませ、しばらく蔵馬の反応を楽しむかのように舌を絡ませ口内で遊ばせると、そっと唇を離した。
「んっっ....」
潤んだ翡翠の瞳が物足りなそうに幽助を見つめる。
「幽助....?」
やけに真剣に自分を見ている幽助を、不思議そうに覗き込む。
「やっぱさ〜。制服で俺とおめぇが歩いてたら違和感あんだな」
何だかんだ言いながら、教師に言われた言葉がショックだった。
別に周りにどう見られようと、幽助自身は気にも止めない。
しかし裏を返せば、蔵馬も同じように周りから好奇の目で見られるって事で-----
色々ゴチャゴチャ考えてたら、ついつい言ってはいけない言葉が口をついた。
「蔵馬ってば優等生だもんな。俺みたいのと一緒にいたらやっぱり恥ずかしいよな」
あ〜あ、と溜め息ついて視線を落とした先で蔵馬の瞳とぶつかった。
困ったように幽助を見つめる瞳に、哀しい色が混じって。
ユラリと瞳が大きく揺れたのが分かった。
「俺は.......」
幽助の服にキュッと縋る指が微かに震えていた。
「幽助が好きだから、一緒にいるんだよ?」
その言葉に答えが全て込められていた。
「でも....それで幽助を悩ませるんだったら....一緒にいない方がいい」
俯いた蔵馬の体が震えていた。
何て事言っちまったんだと後悔しても時すでに遅し。
「ゴメン、幽助。今日は帰る」
一度も幽助の顔を見る事なく蔵馬は出て行った。
バタンと閉まる玄関の音がやけに耳に残って。
幽助だけが残された空間には甘い残り香だけが、たった今、紛れもなくそこに蔵馬がいた事を物語っていた......