闘神の章〜幽助×蔵馬〜

□【poker face】
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「お〜い、何だよ。みんな潰れちまったのかよ〜」


目の前で酔いつぶれて大の字に横たわる桑原を足でゲシゲシと突っつく。

完全に寝てるのか、反応一つせず盛大な鼾が聞こえる。

ソファーではこれまた飲みすぎたのか、飛影が珍しく顔を真っ赤にして伸びていた。

ガラステーブルには顔を突っ伏して気持ちよさそうに眠るコエンマの姿。


そして部屋中に蔓延するアルコールの匂いと、散乱する酒瓶の数々。

どのような経緯を経て今の惨状に至るのかは火を見るより明らかで........


決勝戦が終わり、勝利の打ち上げをしようぜ!と宴会の席を設けたのは幽助。

開放感からか、みんないつも以上のピッチで飲み進め、夜も更ける頃には酔っ払いの巣窟と化した。

女性陣は全員早々と切り上げ自室戻り、残った男性陣も一人また一人とダウンして。

結局、残ったのは発起人の幽助とほぼ飲まなかった蔵馬の二人。

幽助はまだ飲み足りないのか、新しい缶ビールに手を伸ばし、プルタブを開けている。


「幽助も飲みすぎないで下さいよ」


困ったように微笑みながら、蔵馬は散らかった空き瓶を片付けていく。

散乱していた酒瓶が次々と片付けられ、幽助の前にいまだ未開封の数本を残すだけとなった。



「蔵馬もこっちで飲もうぜ」



手持ち無沙汰の幽助が、何やら隣の部屋でモゾモゾ音を立てる蔵馬に声をかけた。



「ちょっと待って下さいね」



姿を見せた蔵馬は手に3枚の毛布を抱えていて。



「このままだと風邪引いちゃうからね」


特に酔いつぶれてる時はね、と笑いながら桑原、飛影へと毛布を掛けていく。

その様子を幽助はじっと見つめていた。

だから見逃さなかった.......

最後コエンマの肩に毛布を掛ける時に見せた蔵馬の優しい微笑を。
他の二人の時とは明らかに違う.......愛しい者を見つめる瞳。

胸の奥に何かがチクリと刺さった気がした。



「幽助はまだ寝ないんですか?」


ようやく向かい側に座った蔵馬が水の入ったグラスを持ちながら尋ねた。


「何か目ぇ冴えちまってさ、おめぇは?」



「同じく。全然眠くならないです」



少し困ったようにグラスの水を一口飲む。喉がコクりと鳴った。



「じゃあさ、トランプしようぜ!トランプ!」


返事を待つ前に取り出したトランプを器用にきっていく。

蔵馬はその様子を可笑しそうに笑って見ていた。


「よし!蔵馬!ポーカーで勝負しようぜ!」


「ポーカーですか?」



「でさ、負けたら勝った方の言う事を一つ聞く」



どうよ?と悪戯っぽく目を細める。


幽助の勢いにビックリして瞳を丸くするも、飲みかけのグラスを置き、ニッコリと笑って肯定の意を示す。



「いいですよ、その勝負受けましょう」


両肘で頬杖をつき、負けませんよ〜とクスクス笑姿が何とも可愛らしくて、思わず赤面してしまう。


「じゃあ俺からな」


配り切ったカードの山から1枚抜く。

いつになく真剣な表情の幽助に蔵馬は笑いを堪えるのが精一杯だった。
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