闘神の章〜幽助×蔵馬〜

□【SWEET HOME】
1ページ/5ページ

From:幽助
sub

悪りィ、最近メッチャ忙しくて手が離せないんだわ。落ち着いたら連絡する----




蔵馬は何度目かの溜め息をついて、パタンと携帯を閉じた。
八つ当たり気味に携帯を放り投げる。
ネクタイをシュルりと外すと無造作に放り投げ、ソファーにその身を沈めた。
床には脱ぎ捨てられたらままの上着が、抜け殻のように置かれ横倒しになった鞄からは書類が顔を覗かせている。

部屋が散らかる事を嫌う蔵馬にしては物珍しい光景。

起き上がる気力がないのか、右腕で顔を覆い天井を見つめたまま。


「.....幽助のバカ....」


口から出たのは久しく会ってない恋人へのささやかな悪態。

蔵馬が社会人として養父の会社で働き出して3年。会社員として優秀な彼に回ってくる仕事量は必然的に増え、帰りが深夜になる事も少なくない。


週末には休みを取ってるも、月に数回は魔界と人間界を行き来してるので、確実に自由になるのは月に2〜3日あるかないかだ。


かたや幽助も屋台営業が忙しく、休みは不定期。
週末ともなれば稼ぎ時とあり、休みになる事はまずない。

それでも今まではお互い何とか時間を作って、逢瀬を重ねていた。


ところが今回は勝手が違った。もうかれこれ3ヵ月も幽助に会っていない。メールはそれなりにやり取りしてるも、所詮は文字の羅列に過ぎず。

「バカ幽助」


本日2度目の悪態が声となった。

蔵馬が少しでも時間ある?とメールしても、返ってくる内容は毎回同じ。


「今は忙しい」
「ゴメンな」
「今度な」


仕事がら昼夜逆転の生活は仕方ない事だと分かってはいる。深夜働いてる幽助に、日中会いたいなんて言えなかった。
だから、この3ヵ月一度も「会いたい」とは言わずにいた。

会いたい気持ちを我慢して我慢して。。。どうしようもなくなって、小さな我が儘を文字にした。


----幽助に会いたい.....-------


それなのに。しばらく経って届いた返信があの内容。
さすがの蔵馬も携帯を放り投げたくなるというもの。


時計を見ると23時半を指していた。
そういえば夕飯まだだったなと思い出す。

(ラーメン食べたいな。。。)


ラーメン食べたいなんて、幽助に会う為の理由付けみたいじゃないか、と可笑しくなってきた。

でも-------


「別に。。。いいよね。。。」


20分後、Tシャツとデニムに着替えた蔵馬はバタバタと家を出て、幽助の屋台に向かった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ