企画室〜薔薇色の小箱〜

□【幽蔵対談番外編〜潰れた後に〜】
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『うー…無理眠い…。』
直後、テーブルに突っ伏して寝息を立て始めた幽助を見て、蔵馬は笑った。

『飲み比べはキミの勝ちだね。』
酔った素振りを見せない幽助に笑いかける蔵馬。


「当たりめぇじゃん。俺、おめぇらが思ってるより強ぇんだって。それに....」


スヤスヤ寝てる蔵馬ちゃんを愛しそうに見つめ、


「ちゃんと蔵馬を連れて帰らないといけねぇしさ」


『ふふっ。そっか。』
蔵馬、少し考える素振りを見せ、
『そういえばキミたちは何がきっかけで付き合い始めたの?』


「きっかけ?ん〜....何だろ。気付いたら惹かれてたって感じだかんな。付き合い始めたのは暗黒武術会の前からだけど。ほら、こいつおめぇと違って危なっかしぃからよ(苦笑)俺が守ってやんなきゃ!!!って中坊のガキなりに思ったわけよ」


『へぇ〜そんな前から付き合ってたんだ!?』
蔵馬ビックリ。
『え、じゃあキミから告白したの?』
興味津々。


「つうか....食いついてくんなぁ(笑)あぁ、告白は俺から。今思い返しても人生であんな緊張した事はねぇよ。だって相手は蔵馬だぜ??マジ高嶺の花みてぇなもんだったしよ」


『そうなんだ…。そっか…。』
((オレにとったら幽助の方が手を伸ばしたらいけない存在だったから、不思議だ…。))
『その時彼はもうキミのこと好きだったの?』
蔵馬、更に食いつく。


「えっ?あぁ、まぁそうみたいでよ////」


照れる幽助。


「俺が告白した時のあいつの真っ赤な顔さ、今でも思い出せるわ。マジ一生忘れられねぇ日なんだろうなって....あ〜、そういえば蔵馬に目の前で泣かれたのもあの日が最初だわ」


幽助、懐かし気にでも苦笑い。


『そうなんだ…。』
目を細めて柔らかく笑う蔵馬。
『泣かれたって言っても嬉しくてってことでしょう?』


「そうなんだけど。今でこそ蔵馬が流す涙の意味っつうの?分かるようになったけど、あん時はまさか嬉し涙なんて思わねぇじゃん。マジで焦りまくってよ」


蔵馬ちゃんを優しく撫でながら、嬉しそうに話す幽助。


「つうか....俺の話ばっかしてもつまんねぇじゃん(苦笑)おめぇの方はどうなんだよ。付き合ったキッカケとか、どっちから告白したとか?」


『オレ!?オレ達は…。』
蔵馬、少しだけ伏し目がちに。
『好きになったのはオレの方がずっと早かった…かな。告白してくれたのは、彼からだったけど…。オレは、ずっと言わないつもりだったし。』
当時の事を思い出したのか、口を閉ざす蔵馬。



「.....そっか。いいよ、別に無理して話さねぇでも。始まり方はそれぞれだしよ。最初から幸せな始まりばかりじゃねぇし。でも、今はそいつといれて幸せなんだろ?」


『最初から、幸せだったよ。彼と出逢えて。オレは、ね。でも彼はオレを選んだことをそのうち後悔するんじゃないかって…。』
蔵馬、チラリと幽助の寝顔を見やる。


「.......おめぇと俺の蔵馬ってさ、何もかもがちげえじゃん?性格も雰囲気も。でもさ、1つだけ共通点があんのな」


幽助、蔵馬ちゃんと蔵馬さんを交互に見比べながら笑う。


『共通点?』
分からずに首を傾げる蔵馬。


「悩まなくもいい事に変な神経使うトコ。ほんっとそっくり(笑)おめぇ今の言葉そいつに聞かせてみろよ。怒鳴られっぞ。つうか、俺がそいつだったら怒鳴りつけてる」


蔵馬さんをジッと見つめる幽助。


「おめぇさ、"愛してる男を信じなよ"って俺の蔵馬に言ったんだって?その言葉そっくりそのまま今のおめぇに返すわ」


"なっ?"と笑いかける幽助。


ハッとする蔵馬。
『そう、だね…。…ありがとう。』
照れたように笑う。


「ちょっ....おめぇのその照れ笑い....正直可愛いよな。やっぱそういうトコ、おめぇの幽助も"堪んね〜"って思ってんだろうな」


幽助、おかしそうに笑いながらグラスを傾ける。


『だ、から…可愛いなんて言われても嬉しくないですって…。』
言いながらも顔を染めて視線をさ迷わせる蔵馬。

そっと幽助の膝で眠る蔵馬ちゃんを見つめる。
『……でも、キミが彼を可愛がる気持ちは分かる。彼はオレだけど、オレじゃないから。本当に、素直だよね、彼。オレと正反対。』
蔵馬、困ったように笑う。


「あはは。確かに正反対だよな。でもさ、素直すぎんのも玉に瑕なトコあるぜ?いやね、俺の前ではいくらでも素直になってくれていいんだけどよ。これが万人に対してだろ?こっちはハラハラしっぱなし(苦笑)今日一日で分かったと思うけどさ」


困ったように笑いながら、蔵馬ちゃんに視線を落とす。


「あっ!!そういえばさ、おめぇホントに蔵馬に"キスの仕方教える"なんて言ったん?」


『アハハ!冗談で、ですよ?キミにもこっちの幽助にも愛されてる彼が何だか悔しくてね。ごめん、からかっちゃった。』
蔵馬、悪戯っぽく笑う。


「冗談でも蔵馬、本気に受け取ったんじゃね?何かどんな反応したか想像つくわ〜(笑)」


幽助、大笑いしそうなのを必死でこらえる。


「つうか、悔しいって.....俺は蔵馬に対しての"愛する"とはちげぇけど....おめぇも蔵馬として大事だと思ってるぜ?こんな事聞かれたら、こいつの事泣かしちまうだろうけど」


軽く身じろいだ蔵馬ちゃんの頭を撫でながら、蔵馬さんに視線を向ける。


『多分キミの予想通りの反応だったと思うよ。』
蔵馬、クスクスと笑ってから、幽助の言葉が意外だったのか、ピタリと固まる。
((どうしよう…嬉しい。けど、喜んでイイの…かな。))
『…ごめん、気を遣わせた?なんか…オレ今日キミを困らせてばかりだね。』
申し訳なさそうに軽く俯く。


「あんな〜、そこは素直に喜べって。悪いけど俺そんな気を遣えるような男じゃねぇよ?あっ!でも喜んだらおめぇの幽助が落ち込むか(笑)」


「ん〜.....幽助ぇ〜....」


何かを探すようにモゾモゾと動く蔵馬ちゃんの手に指を絡める。


「ちゃんとここに居るから。まだ寝てな」


「幽....けぇ...」


蔵馬ちゃん安心したのか爆睡継続中。


「で何だっけ?あぁ、だから俺は気も遣ってねぇし、おめぇに困らされたとも思ってねぇから。むしろ俺らの方が迷惑かけちまってたじゃん。とくにこいつ(苦笑)」


蔵馬、そっと笑う。
『嘘つき。キミはそう思ってないかも知れないけど、いつも気遣ってくれてるじゃない。それに、迷惑なんてかけられてないよ。』


「気ぃ遣ってっか?んなつもりはねぇんだけどな。いやいや、マジ迷惑かけまくりだったっつ〜の。結果を分かってて飲ませた俺も悪ぃんだけどよ」


幽助、バツが悪そうに頭をワシャワシャ。


『うん、そういうとこ、凄いと思う。無意識なんでしょう?……いや、ホント迷惑だなんて思ってないよ。むしろ面白い物見せてくれて感謝。』

蔵馬、どうぞ、と空になった幽助のグラスに焼酎を注ぐ。


「おっ、サンキュー。無意識....なんかな?ン〜、そういやおめぇの幽助に"俺はそんな気を遣えないからオメーの蔵馬と一緒にいるのは無理"って言われたんだよな」


幽助、グラスの焼酎を一口飲む。


「やっぱり蔵馬に対する考え方の違いってやつ?おめぇの事は支えてやりてぇんだって。でも俺は....."守りたい"なんだよな」


蔵馬ちゃんに視線を落としてフッと笑う。


「そういうのが出ちまうのかもな。やっぱ甘やかしすぎか?」


幽助、蔵馬さんのグラスに焼酎を注ぎながら小さく苦笑い。


「つうか、面白いもんって何だよ(笑)」


『ありがとう。…いいんじゃないの?甘やかし過ぎでも、それがお互いの幸せなら。』

ぶるっと小さく震える幽助に気が付いて、上着を掛けてやる蔵馬。
幽助、パチッと一瞬目を開くも、蔵馬の姿を確認してすぐに眠りの中へ。

『いや、酔っ払う自分の姿なんて見れませんから。』
コクッと一口酒を煽る。
『オレも、支えたいんです。彼を。』


「十分支えになってんじゃねぇの?空気みてぇな感じで。あっ!空気つっても悪い方の意味じゃなくて」


慌てる幽助。


「当たり前のように存在してるけど、空気がなきゃ生きていけねぇじゃん?そいつにとっておめぇってそんな感じ。何よりも大事なもんなんだよ。まぁ、当たり前の幸せに甘えすぎてたまにヤンチャこくみてぇだけど.....」


言いかけてハッとなる。


「悪ぃ....話題にしてもいい話じゃねぇよな」


『へぇ…幽助、キミにそんな話もしたの?』
蔵馬驚く。
『うん、でも、それは本当にしょうがないかなって。オレじゃ満足させてあげられてないってことだから…。キミは浮気とか絶対しなそうだよね。何よりもそんなことしたら彼が泣きそう。』
クスクス笑いながら蔵馬ちゃんを見つめる。



「おめぇに満足してねぇからじゃなくて、満足しきって安心してっから....じゃね?甘えてんだよ。俺、未だにおめぇと付き合ってるのに何で浮気出来んのか理解できねぇもん」


幽助、納得いかないと首を傾げながらグラスを呷る。


「あ〜、確かに蔵馬泣くわ。つうか....浮気とか考えた事もねぇな。だってよ、ぶっちゃけこいつ以上に可愛い女っていねぇもん(ヘラヘラ)おめぇを前に言うのも何だけど....蔵馬が女の子みてぇなもんじゃん(笑)だからワザワザ他の女と.....なんてな」


幽助、顔を緩ませながらヘラヘラ。


『ふふっ。そっか…。やっぱ羨ましいな。だって例えばオレが彼みたいな性格になったりとか、女になったりだとかしても、きっと幽助浮気しますもん。』
でもね…、と眠る幽助を優しく見つめる。
『最終的に、オレの所に戻ってきてくれたらイイ。……なんて、これも惚れた弱味って言うんですかね。』
情けなさそうに笑う蔵馬。


「そっか.....でもそうやって全てを包み込むおめぇの愛っつうの?すげぇなって思う。そいつもきっと分かってんだろうな。でも....」


幽助、どこか納得のいかない表情。


「やっぱ俺には分かんねぇな〜。俺がおめぇと付き合ってたら、絶対浮気しようとは思わねぇよ?おめぇさ、すっげぇ魅力的じゃん?あっ!!!やべっ!!!今のは問題発言だな(苦笑)」


蔵馬、一瞬キョトンとしてからカッと顔を紅く染めて口元を隠す。
『そ、れは…どうも…。』
((不意打ちすぎなんだけど…。))
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