企画室〜薔薇色の小箱〜
□【Mysterious Day〜番外編〜】
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----幽助で一杯にして----
落ちてきた口付けを受けながら、瞳を閉じる。
何度営みを経験しても、身体を重ね合わせる前の緊張感は慣れない。
それでも触れるだけのキスを繰り返していると、緊張は徐々に緩んでくる。
口付けは啄むような軽やかさを帯び始め、次第に深いものへと変わり....
背中とベッドの間に差し入れられた腕から、頬に触れた掌から感じるのは唯一欲しいと思う温もり。
「ンッッ....んっ、ふっ....んっ...ふぁっ.....」
熱を口内に閉じ込めてた蓋を外せば、溜まった熱が吐息となり散らばり出す。
幽助の舌が白い喉元を滑り、首筋に強く吸い付く。
浮かび上がったのは、たった一人だけが咲かせられる所有の花弁。
「んふっ....んっ...あんっ...幽助ェ....」
呼ばれた名前にホッと安堵を感じた。
---キミは....----
その呼ばれ方はしっくりこない。
やっぱり俺には.....
もっともっと甘い吐息で呼んで欲しくて、性感帯の最たる場所でコロコロ舌を転がし指でクニクニと刺激を与える。
「んぁっっ....ふっ、ンッ...ハァっ...あんっ」
望み通りの反応を見せてくれる恋人に愛しさが募る反面、嫉妬の火種がくすぶり出す。
この声をあっちの俺にも聞かせたのかよ.......
己の行為を振り返れば文句を言うのは無粋だけど、何だか釈然とするもんじゃない。
振り切るように、愛撫を強めた。
「ふぁっ.....あんっ...ックッ...ンッッあ....」
広がる甘い痺れと、押し寄せる快感。
ユラユラ揺れる波に大人しく身を委ねようとして、フッと目に付いたのは幽助の首筋にくっきりと映える紅い痕。
"夢だったんでしょ?"
なんて物分かりのいい素振りを見せたけど、やっぱり納得いくもんじゃない。
俺だって違う幽助と......
同じ事をしておいて癪に障るのはお門違いだけど。
何かやだ.......
生まれた小さな嫉妬心が吐息を抑えつけ、途端に訪れた静寂。
愛撫の手を止め怪訝そうに顔を上げた幽助が見たのは、ただ一点を凝視する瞳。
流石にキスマークはあからさまだよな......
「悪ぃ、蔵馬。おめぇもいい気はしねぇよな」
心底すまなそうな顔に、胸がチクっと痛んだ。
もう一人の"俺"なんだから、"蔵馬"である事に変わりはないんだから。
必死に納得させてみようとしたけど、でも......
同じ"蔵馬"だとしても、他の誰かが幽助の身体に...たとえ一ヶ所だけでも痕を付けるのは許せない。
それだったら.....
「蔵馬....?」
上半身を起こし、ム〜っと口を尖らせキスマークから動かない視線に、戸惑い気味にかけた声。
聞こえてないのかプックリと頬を丸め、ジ〜っと首筋を見つめてる。
「蔵.....っっ」
もう一度声をかけた同じタイミングで、カプっと音がして首筋に小さな痛みが走った。
「....って....え??チョッっ、蔵馬っ?!」
突然首筋に噛みつかれ、呆気にとられてしまう。
てっきり怒った子狐の逆襲かと思ってたら、食い込んだ歯の感触が消えた。
「う〜っっ....痕付いてない〜っっ!!!」
訳が分からず一瞬ポカンとしてしまったけど、蔵馬の意図が読み取れた途端に思わず吹き出し笑い転げてしまった。
「ぷっっ.....くくっ....おめぇってば....あ〜!!!マジそういうのやめろって!!!」
キスマークのを囲むようにくっきりと付いた歯型。
笑いのツボに入ったのか、幽助の肩がフルフルと震える。
「あんなぁ〜、蔵馬。噛み付いただけじゃキスマークは付かねぇんだぞ。歯型マークになっちまってんじゃん」
「む〜っっ!!!」
「.....ったく。キスマークはな、こうやって付けんの!!」
起き上がってた蔵馬をポスっとシーツの波間に埋もれさせ、鎖骨に強く吸い付いた。
「ん....ふっ.....」
かみ殺したような息が洩れ、花開くは紅い痕。
片腕を脇の下に差し込み、蔵馬の身体をゆっくりと引き起こす。
「ほら、やってみ?」
今さら恥ずかしさが込み上げてきたのか、躊躇いがちに伏せられた瞳。
それでも優しい言葉に後押しされ、ゆっくりと首筋に唇を押し当てる。
要領なんか分からないまま、とにかく同じように......思いっきり吸い付いてみた。
蔵馬から与えられる初めての刺激は擽ったさと歯痒さが先行して、また吹き出しそうになったけど......
「ん〜っっ!!!!」
加減を知らず強く吸い付いたまま苦しくなったのか、真っ赤になった顔に無性に愛しさが込み上げてくる。
「お〜い、蔵馬。いつまでもそうしてっと酸欠になんぞ」
トントンっと頭を叩き“もういいぞ”と促すと、チュパっと音をたてて唇が離れた。
残ったのは......
歯形の隣にくっきりと咲いた初めての花弁。
「ちゃんと出来たじゃねぇか」
「....うん.....//////」
向けられたのは初めての体験への恥じらいに混じる、至福の微笑み。
---これだから手放せねぇんだよな-----
もっと、もっと。
愛の印を刻み付けて--------
「なぁ、蔵馬。もっと散らしてみっか?」
ニカっと笑いシャツを脱ぎ捨てた。
チュッと桜色の口元に軽やかなkissを落とし、“続けて”と促す。
照れくさそうに近付いてきた顔。
咲き乱れるであろう紅い花の痕を想い、顔がニヤける。
なのに.....
「ねぇ......幽助ぇ〜っっ......」
なぜか不機嫌さを含んだ声。
またもや何かを見つめてる風の瞳。
翡翠の視線を追って......幽助の顔が青ざめ、タラ〜っと冷や汗が流れた。
鎖骨にもポツポツと散らばるあの時の名残り。
蔵馬を見れば、満開に咲いてた笑顔が一気に萎み珍しく目が細くなってて。
「え〜と......蔵.......」
様子を窺うように恐る恐る口にした言葉は最後まで言えず。
「幽助のバカぁぁぁぁっっっ!!!!!」
ドンッと突き飛ばされ、よろめく間に愛しの恋人はスッポリ頭から毛布を被りゴロンと背を向け横になってしまった。
「あ〜....蔵馬ぁ〜.......(汗)」
呼んでもへそを曲げた子狐はそっぽを向いたっきり。
---やばい....これは非常にやべぇぇぇっ!!!!------
完全に損ねてしまった蔵馬の機嫌を治すのは、そう簡単にはいかなそうな空気がヒシヒシと伝わる。
だ〜っっ!!あいつはこんなとこまで〜っっ!!!
ワシャワシャ頭を掻きながら、ご機嫌斜めマックスであろう蔵馬のどうするか、悩みに悩む幽助であった.......
fin.