精霊と世界の戦い

□思慕、廻る
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怠い身体を、誰もいない資料館の椅子に凭れる。他の学生たちは既に帰ってしまったが、俺にはまだ調べものがあったから一人で残っていた。

書き上げたばかりの手元の書類を読み直す。君の字は読みにくいと思うなぁなどと散々口を出されながら書いた前回のレポートより、上出来だ。


やはり俺は何に対しても一人でやる方が向いているんじゃないか。最近奴に依存しているような自分に気付き吐き気がしていたが、大丈夫、今更証明された。俺は依存なんかしてない。
さっさと片付けてこの完璧なレポートを奴に見せ付けてやる。きっと阿呆面をして驚くだろう、今から楽しみだ。


「書き終わったー?」

「何故お前がここにいる!!?」


思わず大声で突っ込んでしまった。声の方を見ると、アホ毛がへらへらと笑いながら手を振っている。


「何故ってなんだよ、リヒターを待ってたんだよ」

「先に帰ったんじゃなかったのか…」

「やだなぁ、君を一人置いて帰ったりしないよー」

「俺は子供か!お前がいなくても大丈夫…」

「いやそうじゃなくてね、僕が帰り道に迷ったら大変じゃないか。だからリヒターと一緒に帰るの」


満面の笑みでイェア☆v(^o^)とポーズされても困る。対処法は無視のみである。


「じゃあお前は子供か。一人で帰れ」

「えぇぇーやだよ一人は怖いよ!変な人がいたら怖いよ?リヒターだって怖いでしょ」

「一体何の心配をしてるんだお前は」

「僕は目を疑うほどの美少年なので襲われやしないかと思いまして」

「ほぅ…俺に対する侮辱か…?」

「ちがうよ!リヒターは僕の千倍かわいいよ!」

「死ね!」

「やだね!そろそろ帰ろうよ。もう閉館になっちゃうよ」

「…鍵は俺が持ってる」

「あっ、でも二人きりで閉じ込められるのも素敵だよね!リヒター鍵貸して!」

屈託のない笑顔と共に差し出される手に、堪忍袋の緒が切れる。
一足先に資料館を出て奴を閉じ込めてやろうかとも考えたが、ひょこひょこ付いてくるアホ毛を見ていると、


「……っ鍵がない…!どこかに落としたかm」

「じゃーん☆実はさっき机の上にあったからこっそり奪ったのでした!はははリヒター、これで二人監禁プレイができるよ!」

「………返せ」

「顔が怖いよリヒター……」


何故俺がこんな奴に振り回されなくちゃならないんだ…。




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