薔薇の道

□おれと、兄ちゃんと、あいつ。
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おれのクラスに転校生が、やって来た。


「夜空 夏(ヨゾラナツ)です」


そう。
こいつのせいで兄ちゃんも含めて、おれら兄弟は、とんでもないことを。



だが、それは、おれら兄弟は知らないことだ。



知っているのは、あいつだけだろう。


おれと、兄ちゃんと、あいつ。


「今日から、この教室でお前らと一緒に勉強する夜空だ。」

「夜空夏です」

高校1年の秋。
おれのクラスに転校生がきた。なんか、見た目おれは、近寄りたくない。

「カッコイイ〜!!」

なんて言ってる女子。
あいつの何処がいいんだ?あんなチャラそうなヤツ。・・・あ。
こっち向いた。・・・やべぇ。

「日向(ヒナタ)。」

「あ、はい。」

仕方なく立ち上がる。

「あいつの隣の席が、夜空の席だ。」

「はい。」

・・・あ。そーいえば、隣に席が増えてる。

「よろしく」

「あ、うん。よろしく」

律儀だな。こいつ。

「あ、名前は?」

「あ、あぁ。おれは、日向秋(アキ)」

「じゃぁ、秋だね。オレのことは、夏ってよんで?」

「うん。・・・わかった。」


前言撤回!こいつ馴れ馴れしいなぁ。

そんなこんなで、今日一日、あいつ・・・夜空夏が、おれに何故かべったりだった。
・・・早く家に帰りたい。兄ちゃんに会いたい。


いつから、こうなったんだろう。
こーゆーイライラする日は、兄ちゃんに会いたくなる。

おれの両親、親父は、日本国内を飛び回っている。お袋外国を飛び回っている。ほとんど家には帰ってこない。だから、兄ちゃんは、おれの親代わりでもあったんだ。

ブラコンいわれよーが、しょーがないじゃん。






終礼が終わり、さっさと家に帰るため気配を消して教室をで・・・ようとした。
が、あるやつに捕まった。
「あーきくん!」

「くん付けはやめろ。気持ち悪い」

「あーうん。で、どこ行こうとしてんの?秋」

あいつ。夏だ。

「帰んの。なんか用でもある?」

もう、今日は疲れたんだ。帰らせてくれ・・・。

なんてげんなりしていると、

「そうなんだ?気をつけてね!また、明日〜」

そう言ってあっさり解放してくれた。

「あ、あぁ。明日・・・。」

そう言って帰路につく。



あの時、微かに夏が笑っていたなんて、俺はおろか、周りのやつらも知らなかった・・・。

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