本棚(短編)
□屋上の空間
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ギィィ、と扉が開く音が聞こえた。
驚いて振り返ると、そこには知らない顔。
そいつは私の近くまで来ると、フェンスに背中を預けるように座り込んで、
何ページあんの?ってくらいの分厚い本を読み出した。
「(黒ズボンにネクタイ……男子、だよね?)」
私がジロジロ見ていたせいか、そいつは私に話しかけてきた。
「…何?」
女の子みたいな顔のそいつは、大きな黒い目をこっちに向けた。
「…っ」
…ムカつく。
私は、私だけのこの空間をぶち壊したそいつに腹が立った。
ひらりとスカートを翻して、屋上の扉へと向かう。
「あ、ちょっと」
そいつの声が聞こえたが、知らん顔をして勢いよく扉を閉めた。