本棚(短編)

□Who are you?
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移動の時間を使って色々説明しよう思う。
俺は日高薫という。
“薫”が名前な訳だが、れっきとした二十一歳の男だ。
日常に起こる様々な現象を解明するために、地元の大学で科学を勉強している。

ところで、この世には科学で証明できないことが数多くあることを知っているだろうか。
心霊現象などがそれにあたる。
勿論、中には「幽霊なんか信じない」と言う人もいるだろう。
実を言うと、俺も信じていなかった。

この人に出会うまでは。

俺の前を歩く男の名は、嶺倉悠斗。
俺の一つ年上で、以前は同じ大学にいたことから、俺は彼を“先輩”と呼んでいる。

実はこの人、人には見えないものが見えるのだ。
平たく言うと、霊感が人並み外れて強いのである。

俺と出会った時、先輩はこう言っていた。

『〈見えない〉と〈いない〉は、別物だよ』

この言葉が俺を変えたきっかけであり、先輩の元で助手として働くきっかけでもあった。

え、何の助手かって?それは―――。


「すみませーん。心霊相談所の者ですけどー」

心霊相談。
先輩が自らつくった仕事だ。
心霊現象が起こっている現場へと赴き、その謎を究明し、あわよくば除霊しちゃおうという仕事である。

「すみませーん。お留守ですかー?」

先輩は依頼人の家の呼び鈴を連打しだした。

「…先輩、依頼人は神様ですよ」

十数回目を鳴らしたところで、ガチャリと鍵の開く音がした。
続いて、錆びた蝶番が鳴る。

「……はい」

顔を出した女性は、酷く痩せこけていた。
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