『こわいモノ』



茂野「はーい、全員集合〜♪」
一同「………‥‥」



そう言って

嬉々とした表情で皆を呼び出したのは幽霊部員の茂野だった。



相模「ったく、せっかく練習も無くて久々に今日一日ゆっくり休めると思ってたのに。呼び出しとかマジ迷惑なんだけど……」


だが相模がげんなりと呟いたのをきっかけに

半ば強制的に合宿所の広間へ集められた部員一同もまた、不満そうな声で口々に愚痴を漏らしていった。



裕一「オイ、茂野。今日は練習もねーのにこんな所に呼び出したぁ一体どういうつもりだ??」
BLACK「生憎こっちはてめーの茶番に付き合ってる暇はねぇんだ、用件は手短に頼むぜ」
多摩「何を考えているか知らんが…下らん用件だったら罰として一週間ボール磨きをやらせるからな!!」


と。


しかし、そんな手厳しい部員の言葉に少しも臆さず茂野は笑いながらこんな事を言い出したのだ。




茂野「まぁまぁ、ちょっとくらい付き合えよ。どうせお前ら夏休み中も部活か勉強ばっかりでロクに青春らしい事何にもしてねーんだろ??だから優しい此の俺がせめてもの思い出作りに協力してやろうってんだ、寧ろ有り難く思って欲しいね!!」


ふふん。と何故か上から目線で実に恩着せがましい事をほざく茂野。


そんな彼の横暴で有難迷惑な提案に、相模を初め裕一や多摩川がすかさず反論しようと試みるが―――



胡蝶「へぇ〜。思い出作りッスか。いいっすね、其れ」
雪護「まぁ、先輩命令とあらば」
渡「うっひょー!!思い出作りだって??何だよ其れ、わくわくするジャン!!」
虎野「…‥全然興味無い、せっかくじゃないし参加なんてしないからな。俺は」



其の他の部員達は結構ノリノリだったので、裕一も多摩川も反論するタイミングを逃して唖然とするばかりだった。





其れでも―――


BLACK「ケッ、下らねぇ。思い出作りだか何だか知らねーけど‥付き合ってられるかよ」
茂野「あ、オイ!!BLACK??」


クールな一匹狼、岩大ことBLACKは茂野の提案に耳も傾けず部屋から出ようとドアノブに手を掛けてやった。


そして、そのまま自室に帰ろうと試みるが。



茂野「そうつれない事言うなよ〜」
BLACK「うぉっ?!」


いきなりドンッ、とタックルをかます様に茂野が背中越しに抱き付いて来たので。


驚いた拍子にBLACKは元の人格である岩大賢太郎に戻ってしまったのだ。



岩大「…‥あれ??俺は一体‥??」


そんな、タイミングが良いのか悪いのか不本意にも元に戻ってしまった岩大を見て



裕一「ホント、間が悪い奴」
多摩「逃げ出すチャンスを逃したな」


如何に岩大がお人好しで面倒見の良いかを嫌という程知って居た二人は、口を揃えながら同情の言葉を発してやった。


すると



相模「悪いけど先輩達の暇潰しになんかいちいち付き合ってらんないッス。じゃ、お先に」
裕一&多摩「!!!!!」


今度は後輩である相模がどさくさに紛れて逃亡を図ろうとしたので。


直ぐに気付いた裕一と多摩川は先輩という立場を利用し



裕一「相模、てめぇ先輩を置いて逃げようなんざ100年早えぇぞ!!」
多摩「そういう事だ、逃げたらグラウンド整備一カ月だからな!!」

何とも理不尽なセリフを吐いて、生意気な後輩の首根っこを掴んでは逃げられない様に捕まえてやったのだ。



相模「ちょ‥卑怯ッスよロボット先輩!!」
多摩「黙れ相模!!少しは協調性と仲間意識というモノを重んじてみろ!!」
相模「んな事言われても‥」
裕一「観念しろって。大体自分だけ逃げようだなんて考えが甘すぎるんだよ」
相模「…‥‥(可愛い後輩達が盛り上がってるせいで)先輩の自分達が逃げられないからって俺を巻き込まないで下さいよ」
裕一&多摩「うっ‥‥煩いっ///」


そしてそんな不毛なやり取りをしている間に―――





茂野「じゃ、そーいう訳で今から肝試し大会開催〜♪」
一同「!!!!!」



またもや何の脈絡も無く茂野が突然イベントの開催を宣言したので。



一同「はぁ?!肝試し大会だって?!」


と、叫んでは

部員達は皆目を丸くさせて、ただただ驚く事しか出来なくなってしまった。




其れでも、常に冷静で唯一驚く事も戸惑う事もしなかった雪護だけが


雪護「肝試し大会、ですか。急ですね」

実に淡々とした口調で呟いてみせれば



茂野「面白そうだろ??丁度同じ合宿所に来てる理徳大の奴らがレクリエーションで肝試し大会を開くっていうからさ〜。俺達も其れにあやかって楽しもうぜ!!」


などと、至極勝手な事を言い出したので。


一瞬、きょとんとした表情になった一同はまたもや自由人の茂野に対して口々に疑問を投げかけてやったのだ。



裕一「あやかってって…他校の肝試しに参加するつもりかよ?!つーか許可は貰ったのか??」
多摩「ふざけるなっ!!そんな事出来る訳が無かろう。凌輝様の許可も無く勝手に決めるんじゃない!!」
岩大「そうだぞ、茂野。まずは部長の凌輝に是非を問うてからだな…‥」



そうすれば。


茂野「ったく、許可ならとっくに貰ったっつーの。第一肝試しなんかタダのお遊びだろ??リョーコの許可なんざなくったって自由参加でいいじゃねぇか」


と、相変わらず適当な茂野が投げやりな様子で言い返して来たから。



生真面目で堅物で融通の利かない多摩川も頭に血が上ってしまい



多摩「お遊びだと?!ふざけるのもいい加減にしろ!!そういった安易な他校との交流がトラブルを引き起こしかねないと‥まだ分からんのか!!」
茂野「!!!!!」


其の昔

他校の生徒と喧嘩が元で謹慎処分、及び出場停止になったにも関わらず。


少しも反省している素振りが見られない茂野に対し、多摩川が勢い余って胸倉を掴んでやった瞬間だった。





凌輝「ぎゃあぎゃあ煩っせーな、揉め事か??」
藤原「駿也〜♪お待たせや〜」
多摩&相模「!!!!!」


丁度、女湯から出て来た凌輝と藤原が姿を現したので。



驚きつつも想い人の色っぽい湯上り姿にドキッとさせられた二人は



多摩「い、いえ。何でもありません///」
相模「お、遅かったジャン///」


ついつい頬を赤らめ、見惚れてしまったのだ。




そんな意外に純情な二人に対し



裕一「(何赤くなってんだか)」
茂野「(相変わらずリョーコのおっぱいでけぇな。でもふじこちゃんの小さなおっぱいも捨て難いよなぁ。でもでもやっぱとしこちゃんのおっぱry)」
岩大「(おぉっ!!た、谷間がくっきりと‥!!浴衣っていいよなぁ///…‥って、俺は何処を見てるんだ!!けしからんっ!!)」


などと


ある者は呆れつつ

またある者達は邪な考えを抱きながら一連の様子を見守る様に眺めてやった。




凌輝「何でもねぇって事はねぇだろ。どうしたんだよ、多摩川。怒鳴り散らすなんてお前らしくないぜ??」
多摩「そ、其れはですね‥茂野が勝手に他校の肝試し大会に参加すると言い出して」
凌輝「はぁ?!肝試し大会だって??」
多摩「はい」
凌輝「…‥‥」



なんて

凌輝が驚くのも無理は無い。



風呂から上がってみれば急に肝試し大会をやる。だなんて話しになっているのだから。


しかも、部長である自分に何の相談も無しに。




だが―――



凌輝「許可は貰えたのか??」
多摩「はい。あくまで茂野の口から聞いただけで事実確認まで取れてはいませんが」
凌輝「まー許可が取れてるならいいんじゃねぇの??」
多摩「…‥‥凌輝様?!」
凌輝「破目(はめ)を外さず、向こうに迷惑を掛けない様に配慮するのが条件だけどな」



義理の兄である茂野の性格を熟知していた凌輝はあっさりと了承してやったのだ。



どうせ駄目だと言ってもあの自由人には通用しないと分かっていたから。



そして


茂野「やりぃ!!やっぱ凌子は話しが早いぜ♪」


妹の許可が下りた事に歓喜する様、茂野がぱちんと指をならせば



渡「面白くなって来たぜ!!」
虎野「あぁ、其の通りじゃない。遅く参加したくないな」
胡蝶「肝試しかぁ。参加するの何年振りだろう」
雪護「修行の一環として励みます」


他の部員達もいよいよ其の気になってしまったので。



頭痛さえ覚えた多摩川は、ぽつりと



多摩「こうなっては仕方あるまい。せめてトラブルが起きない様見張るか」


副部長としての責任感から、部員達の行動に目を光らせるのだった。




続く!!



※肝試しが書きたかっただけです(何という季節外れ!!)次からはホラーが苦手な凌輝と藤原の乙女な部分が見られる‥ハズ!!

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ