守りたい 第一部


□第23話
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こちらから申し出た三対三の六人バトルをイチガキはあっさり聞き入れた。これによって霊丸の撃てない幽助をフォローする事は可能となったが、霊力・経験差を考えるとまだ不利だろう。
いや、倒すだけならエリカが本気でやれば難しくない。
しかし、やはり桑原の見たという夢が気になる。

「聞けば聞くほど夢通りだ。しかし、まさかそんな事が……」

「ありえないとは言い切れません。あなたの霊感は人並み外れていますから、彼らの意識が流れ込んできたという事は助けを求めているのかもしれない」

「じゃあやっぱり、あの三人は実験とやらで洗脳されて……」

「自分の意志とは関係なく戦わされてるってのかよ!?」

幽助も桑原も眉根を寄せる。もしそうだとすれば、やりにくいことこの上ない。
しかし、だからといって『はいそうですか』と負けられない。

『それでは、試合始め!』

そんな迷いを無視して、戦いの火蓋は切って落とされる。

「ハウンドクロー!」

右腕を大きく振りかぶり、黒髪の男……大会メンバー登録・M-3号と名付けられた男が開始と同時に襲い掛かってきた。

(マズい! 幽助のヤツ素手で受けようとしてる!?)

「後ろへ跳んで!」

エリカの声に反応しそれを避けた幽助と桑原を、別の男の霊気棒が直撃。

「な、なんだ!? 見えねぇ何かがぶん殴ってきやがった!」

「しかし、跳んでなきゃあいつのこれまた見えねぇ手形に潰されるとこだったぜ!」

……やはり、見えていない。
これはヤバいな。

「霊気というのは、洗練すれば霊力の弱い者には見えない様にする事も可能です。今のあなた達にはあの二人の霊気を見ることは出来ません」

「な、なんだとぉッ!?」

「それじゃどうやって戦うんだよ!?」

「そんな事……自分で考えて!」

逐一指示を出しながらなど、とても戦えない。男なら気合いで何とかしろ。



「ぐあッ!」

「うっ……!」

始まって二十分程経ったろうか。
防戦一方の試合運びに、疲労だけが積み重なっていく。三人のコンビネーションは機械並みであり、さらに見えない攻撃に幽助も桑原も翻弄されっぱなしだ。

「しまっ……!」

(危ない!)

吹っ飛ばされた幽助の着地点に別の攻撃が迫り、思わず体が動いてしまった。

「ぐっ!」

「エリカぁっ!」

全身に鋭い痛みが走る。
幽助を庇ったことで唯一無傷だったエリカも負傷した。

『あぁっとエリカ選手、ハウンドクローをモロにくらってしまったー! 場外により、カウントを取ります!』

いつの間にか小兎がすぐ傍に来ていた。
敵味方入り乱れての混戦状態な為、リングの外から仕事をこなしていたらしい。臨機応変で結構なことだ、と呑気にもそう思った。

「いっ、つ……」

「やれやれ、何やってんだいお前たちは。手加減して負ければ、それで奴らが救われるとでも思ってんのかい?」

「え……この声」

驚いて顔を向ければ、フェンスの上に見知った人物。

「ばぁちゃん!?」

幻海がそこにいた。
いつもお茶を飲んでいる時と変わらない表情で。
幽助達には聞こえない程度の声で、二人は言葉を交わす。

「優梨、お前このままおとなしくやられるつもりかい?」

「そういうワケにはいかない、けど……」

どうすれば彼らを助けられるのか、わからない。やはりこのまま倒すしかないのか。

『わにゃー!?』

最悪の考えが頭をよぎる中、カウントを取っていた小兎の叫びがマイク越しに響き渡った。
激しい何かの落下音の後、リングに落ちてワンバウンドしたそれがこちらに転がってくるではないか。

「うわっ!」

逃げるようにリングに戻るエリカと、フェンスに激突するそれを横目で見やる幻海。
そして観客席にもドカッと、機械か生き物か判別し難い物体が乗り込んできた。

『な、何事でしょう!? 突然Dr.イチガキチームのメンバーが空から降ってきたと思ったら、今度は客席に……あれは……ロボットでしょうか!?』

「なんだぁ、あのデカブツは?」

そのデカブツに目を奪われ気づくのが遅れるも、傍らには蔵馬と飛影がいた。
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