守りたい 第一部


□第6話
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『優梨! どうしてアンタはそうなのよ!?』
『なんでこんな簡単な事が出来ないの?』
『涼司がアンタの年の頃はもっと……!』
『あぁ、涼司……私の涼司。どうして、どうしてこんな事に……!』


――†††――


目覚まし時計が鳴り響き、優梨はそれが夢であると気付く。

(久しぶりに見たな。あ〜、なんか頭痛い)

のろのろとベッドから起き上がり、身支度を整えた。
そしてチェストの上に飾られた二つの写真立てを手に取る。

「お父さん、お母さん。涼司兄さん、沙羅ちゃん。行ってきます」

そう声を掛けて家を出るのだった。



私立海皇学院。全国的にも有名なエスカレーター式の進学校。
世間の同い年の子らは、今頃受験でてんてこ舞いのはずだが、ここに所属している優梨には縁のない話だ。

「おはよう、優梨」

「あ、愛実。おはよ〜」

声を掛けて来たのは高橋愛実。優梨の友人で同級生である。

「今日はちゃんと来たわね」

「ヒドいなぁ、そこまでサボってないよ」

「何言ってるのよ、最近目立つわよ。本当に留年しちゃったらどうするの?」

年齢の割にしっかりしている彼女は、マイペースな優梨の世話焼き係のような存在だ。
たびたび学校をサボる彼女をよく気にかけている事がきっかけで仲良くなった。

「留年かぁ。それはさすがにマズいなぁ。お祖母さまに何を言われるか」

「お祖母さん、容態どうなの?」

「……あんまり良くないね」

相変わらず、見舞いに行っても眠っている事が多い。
せっかく幽助が生き返ることになっても、それと入れ違う形で……という可能性も充分にあり得る。

「そう……ねぇ、あなた本当に大丈夫?」

「ん、大丈夫だよ。そんな心配しないで」

そう言って笑ってみせる。
本当は少し強がった。けれど気落ちしてはいられない。
これからは忙しくなる。幽助を守ると、決めたのだから。
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