守りたい 第一部
□第13話
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「ねぇエリカちゃん。私、どっかであんたに会った事あるかな? なんか初対面じゃない気がするんだよね」
(えぇぇ〜〜!?)
玄関先で、エリカは静流にそう尋ねられる。予想外だ。静流とはそこまで親しかったわけではないのに。
「いえ、初対面だと思います」
「そう? じゃ気のせいか」
エリカとしては、初対面。
しかしこれは、嘘に……なるのだろうか? 少し、心が重くなった気がした。
桑原家を後にしたエリカは、皿屋敷中学へ向かう。
流れ見る景色は一見、平穏な街並みだ。崩壊の危機にあっていたなど誰も知る由はない。
(とりあえずは一件落着だよね。幽助も桑原くんも強くなってきてるし、飛影も思ったより協力的だし。秀ちゃんは……また心配掛けちゃったなぁ。なんか私、甘えてばっかりな気がするし)
そんな事を考えながら歩く。
冬の日没は早く、辺りは暗くなり始めている。少し急いだ方が良いだろうか。そう思った時、迫り来る妖気を感じた。
一人。殺気までは感じないが、仕掛けてきそうな勢いだ。力は……まだこちらに分があるか。
(……来る!!)
刃をかわせば、アスファルトに亀裂。顔を上げれば、つい先ほどまで共に桑原家に滞在していたそれ。
「飛影! 何のつもりです!?」
問いに答える事無く、次の攻撃が繰り出される。人通りの少ない宵闇の河原沿いとはいえ、誰が来るかしれない。このまま攻防を続けるのは得策ではない。
(場所を変えて……いや、それ以前にやり合いたくないんですけど!)
「やはり傭兵鬼神と渡り合っただけはあるな。この程度は通じんか」
「試したんですか? 私を」
攻撃の手が止まる。飛影はニィッと笑った。初めて見せる笑顔は、実に不敵なものだった。
(可愛くない。こんなのデレじゃない!)
誰だツンデレなんて言ったの。や、私だっけ。
「思ったより面白い。貴様は、楽しめそうだ」
「手合わせなら後日にして下さい。今は螢子さん達が気になりますので」
「学校にはもういない」
「え?」
「警察に連れて行かれた」
「け、警察!?」
そんな大事になっていたとは。
「あなた、二人は無事だって言ったじゃないですか!」
「大した怪我はしていない」
「でも警察沙汰なのでしょう?」
「だから何だ。死んでないならいいだろう」
やはりそんな基準か。頭を抱えたくなる。
「とにかく、私はもう行きます。あなたも今日は引いて下さい」
そう言い残して、その場を去る。飛影はただ無言でエリカの背中を見送った。