守りたい 第一部


□第3話
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「妖魔退治ぃ〜?」

土曜日の午後、優梨は幻海に呼ばれて寺へやって来た。
幼くして強い霊力を持ち、けれどそれを使いこなせずに持て余していた彼女に、力の制御法を指導した人物。
いわば優梨の"師匠"である。

「そう。皿屋敷の外れに廃屋があるのは知ってるかい?」

「あぁ、今ちょっと話題になってる心霊スポットでしょ? え、あそこ何か出るの??」

「妖力は、霊界のランクで言うところのC級中位。周囲の住民が次々に体調の異変を訴えておる。今のところ死者は出とらんらしいが、被害の拡大は時間の問題だろう」

事態が悪化する前に相応の対処を。それが霊界の意志であると、背後にあやめが控えている事が物語っていた。

「ばぁちゃんが行けば良いじゃ〜ん。本業でしょ? 私、学生だよ? 中・学・生! 学生の本分は勉強。そんなヒマ無いの」

「そんな台詞は、皆勤賞の一つでも取ってから言うんだね」

「ゔっ……」

痛いところを突く。相変わらず口の減らない人だ。

「今のお前なら、まぁ大丈夫だろう。これを解決出来たら、呪霊錠を一つ解呪しようと思っておる」

「ホントに!?」

――呪霊錠――
本来なら、修業を行う際に力を底上げする為に使用する技法だ。だが優梨にこれが施された理由は別にある。
未だ完全掌握に至らない霊力を、強引に抑え込む為の物だ。コントロール出来る技量が身に付くまではと、出会って間もないうちに両手両足首に光の輪を掛けられた。
厳しい修行の成果か、両足に関しては既に解呪済みである。

「分かった、そういう事なら私がやるよ」

力に封を掛けられているのが気に入らない訳ではない。解呪は優梨にとって、はっきりと目に見える"目標"なのだ。
一つ外されるたびに、自分が強くなった実感を噛み締める事が出来る。

「いつも言ってる事だが、くれぐれも油断だけはするんじゃないよ」

どれだけ実力があろうと、ひとつの油断で命さえも落とす。自分がいるのは、そういう世界。

「分かってるよ」

耳タコなまでに聞かされてきたいつもの言葉。

――分かっている、つもりだったのだ。
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