テニプリSS

□手紙(立海)
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ねえ、



どうして真田はテニスをしてるの?









ずっと昔に、
そう幸村に聞かれたことがある
その時まだ幼かった俺は答えに迷ったが
今なら迷わず、こう言うだろう。


「テニスが好きだから」ってな、























「……ち、精市?」




「あ!?え、なに蓮二」

柳は、1人ボーッとしている幸村をみつめた
幸村は慌てて柳の方を向きなおす
「練習試合の件なんだが」
「あ〜、今週の日曜日のだっけ?」
「あぁ 氷帝と9時から16時まで、うちの学校で試合をすることになった。」
「氷帝と試合なんて、久しぶりだね」
「オーダーの方は考えてあるから、あとで目を通しておいてくれ」
「おっけ〜、やっぱ蓮二は頼りになる〜」
幸村はそう言うと、ニコォと微笑んだ
そんな幸村の笑みを横目で見ながら柳は何か考えているかのような素振りをしてから、
ふと口を開いた


「……そういえば」





「ん?なーに?」


「体調の方は、大丈夫か?」

柳がそんな事を聞くのも可笑しくない
幸村はついこの前まで、
ある病気で入院して寝たきりだったのだ
それが今、退院して3ヶ月は立っていないのに部活に出てハチャメチャやっている
また いつ倒れても可笑しくないのに…
皆、口には出さないが
実は物凄く幸村の体の事を心配してたのだ



「大丈夫だよ」

それに…、
幸村は人に弱味を見せない男だ

だから尚更怖かった





「皆、心配しすぎなんだよ」

「心配して当然だと思うが?」
「だってこないださ!!担任に頼まれた物を資料室に運んでたら赤也と廊下でバッタリと会って、赤也のヤツ俺を見た瞬間なんて言ったと思う?」
「なんと言ったんだ?」
「『ちょ、部長!!それ俺が持つっすよ、部長は病み上がりなんすからーぁ!あんまり無茶しないでくださいよ』だって」
「赤也なりに気を使ったんだろうな」
「赤也に気使われると調子くるうんだよ、普段 赤也って気使ったりしないからさ〜」

「… 確かに、な」
「だろだろ〜」

「な〜に2人して笑っとんじゃ?」

と仁王はテニスコートのすみにあるベンチに座りながら幸村と柳に視線を送る
「仁王こそ何やってるの?」
幸村が聞き返すと、
「人間観察じゃき」
想像通りの返事がかえってきた
「人間観察という名の部活サボりか」
「参謀も人間観察するか?結構楽しいぜよ?ひとりひとりのデータもじっくり取ることができるきに」
「へ〜、俺もやろうかな」
幸村も仁王の隣に座ると、
人間観察?というものを始めた
「そんで、さっきはなんして笑っとったんじゃ?」
「赤也の話をしてたんだよ、な」
「赤也の話?」
「精市が退院したとたん、赤也は精市に気を使いまくっていて面白い、と話してたんだ」
柳が簡単に説明すると仁王はなるほど、という表情で頷く
「幸村の手術中、ずっと涙目だったからの」
「え、なにそれ!初耳なんだけど」
「初めて言ったんじゃから、そじゃろ」
「ちょ、赤也 可愛いとこあんじゃん」
「今さらか?」
「普段は憎たらしいのにね〜」
「ワカメじゃもんな」
「ちょ、俺 赤也弄りに行ってくる〜」
幸村はそう言うと、コートにいる切原の方へ嬉しそうに飛んでいった



「あれから、元気いっぱいじゃのう…」

「そうだな」

2人は幸村の背をみつめながら
そう呟いた…
「幸村が戻って来て…、嬉しそうじゃの」
「皆、精市の帰りを待ってたからな」


「特に 真田が、の」

「…… さすが人間観察してるだけあるな」
「あれはバレバレじゃよ」
「当の本人は気づいてないようだがな」
「鈍感じゃもんな、真田は」
仁王はそう言い捨てると、
コートの方へ歩いていく…
「そろそろ練習始めるかの、鬼の真田に見つかったらメンドクサイきに」
「それは言えているな」
「参謀 ちょいラリーの相手してくれんか?」


「いいだろう」

二人は共にコートに入って行き
ボールをうち始めた




つづく


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