幻想郷**

□うつけ者
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それが当たり前のように、さも当然のように、何事もなかったかのように、流れるように身を委ねながら、ゆっくりゆっくり、あなたに近付いていく。この馬鹿げた気持ちを抱えながら、誰にも知られることなくひっそりと殺してみせよう。明日も、希望も、未来も、絶望も、過去も、殺してみせよう。きっとそこに残るのは無念を抱えた自分の断末魔だけだ。それなら上々、決して無駄ではなかったと言えるだろうから。

「ねぇ、なんで凜音は何も言わないノ?普通は泣き叫ぶか命乞いするヨ?」
普通だったらそうするでしょうね。わたしだって腕を折られたら痛いもの。でもあなたの思い通りにはならない。

『わたしをそこらの奴らと一緒にしないでくれるかしら』
「あぁ、その表情たまらないネ…すっごい犯したくなるヨ」
鬼のような残虐な笑み。わたしは桃太郎みたいに鬼退治は出来ないだろう。だってあなたより弱いから。でも、最後の最期に一矢報いてあげる。痛恨の一撃を、あなたに送ってあげるから。

「人間にしてはよくやったほうだと思うヨ?俺が強すぎるだけでネ」
『いつまで余裕ぶってる気?もうそんな顔も出来なくなるんじゃない?』
「寝言は寝てから言いなヨ」
さくり。神威の胸に突き刺さったのはわたしの渾身の一撃。避けることも出来なかったでしょう?

「アリ?」
『人間ね、死に際になるとあり得ない力を発揮するのよ』
この為に日々の苦痛に耐えてきたんだから。どうにかあなたの隙をついて、どうにか頑張ったの。

「でも残念。これぐらいじゃ死なないんだよネー」
『ええ、それも承知済み』
あとはわたしの想いもろとも闇に葬るだけだ。地獄の業火のように苦しく、少しずつ四肢を失っていくかのように苦しく、ゆっくりと水に沈められるように苦しい。そんな気持ちはもうたくさんだ。だからさようなら。

『好きよ、神威。誰よりも、愛してる』
すごくビックリした顔してるわ。その顔が見たかったの。


fin.

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