幻想郷**

□ニセモノカミサマ
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そうだ、閃いた。

わたしは色々考えていた。人類すべての望みが叶えば素晴らしい世界が待っているんだと。そうしたら私利私欲で戦が起こることもないし、欲しがるが故に命を奪ってしまうことなんてなくなるだろう。そう信じて疑うこともしなかった。
ただ我武者羅に、ひたすらに、人々の願いを叶えていった。人脈も力もあったからとても捗った。あれもこれも、それも、全部全部わたしが叶えます。忙しい日々に脇芽もふれず、自分の使命を全うしていた。

気付いてしまった。この世界はなんだ…?願えば人を殺すことも簡単になっていた。どうしてこんなことになった?阿鼻地獄だ、この世の果てとはこのことだ。あれは何?なぜ人間ではない奴が我が物顔で歩いているの?
こうなった原因を作ったやつは誰だ?ああ、わたしだ。
人々は願った。こうなってしまった根っこを引き抜くことを。わたしは大悪党だ、偽りの奇跡で神を冒涜してしまった。

「久しぶりだな、凜音。ずいぶんなことをしてくれたなぁ?」
ああ、わたしは高杉に殺されるのか。初恋の人に殺されるならそれもいいかも。現在進行形で好きだけどね。

『わたし、どこで間違えたんだろうね』
やり直せるなら、存在を消せるなら…こんなことになってしまうなら、最初からなにもしなかった。なにもしない世界のほうが、尊かったのに。

『これでね、良くなると思ってたの。なのにこの状況…わたし、いない方がよかったんだね』
「……」
『ね、早く殺してね?痛いの嫌いだからさ』
「…それが最期の言葉でいいのか?」
『うん。へへ、泣けてきちゃう』
てっきり刀で斬られるものだとばかり思っていたからとてもビックリした。心底ビックリした。
なぜ、わたしは高杉に抱きしめられているんだろう。

「オメーは間違っちゃいねぇよ」
『えっ?』
「間違ってんのは、世の中の連中さ。自分の手を汚さずに願いが叶うのをいいことに、リンネをこんなにボロボロにしやがった」
『なにを、』
「こうなった原因を俺と壊しに行こうぜ。全部全部、ぶち壊してやりゃーいいんだ」
ああ、今度はわたしの願いを叶えてもらう番だ。


fin.

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