幻想郷**

□アウトレイジ
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あなたはわたしの一部だった。生まれた日も、アカデミー入学も卒業も、暗部に所属したのも、初めて泣いた日も、悲しかったときも、嬉しいと思うことも、絶望を覚えた日も、大事な宝物も、綺麗だと思うものも、辛く記憶に残ってしまうことも、愛しいと思う人も、なにもかも、全部全部一緒だった。ただ一つだけ違うことがあった。それはどちらかしか生き残れないということ。なにもかも、忍術の数も幻術の掛け方も、同じなのに。

『世界は悲しいね』
「ああ…とても、辛く悲しい」
『これから起きることは、人生で一番耐え難いことだね』
「ああ、本当だ。どうしてこうなってしまったのだろうか」
『なんでだろうね。お互いとても大切に想っているのに』
あなたに触れたい。死にたくない。生きたい。二人でどこかに逃げ出してしまいたい。ひっそりと穏やかに暮らしたい。愛してる。

『わたしが今考えてることは、イタチも考えてるんだろうね』
「ああ、凜音と同じだからな」
殺したくない。でもどちらかが死ななきゃいけない。なんて理不尽な世界なんだ。こんな辛いなら、苦しいなら、悲しいなら。いっそ投げ出してみようか。そうしたらきっと、素敵な世界が待っているはずだ。

『同じだから、決着がつかないね』
「ああ、そうだな」
なんの術をかけて次にかける術も、避け方も、影分身の数も、なにもかもが一緒だ。こんなんじゃ終わるはずがない。二人で共倒れしかないのだろう。

『言いたいことがあるの』
「ああ、俺もだ」

『「愛してる」』
二人同時に自分の心臓を貫いた。

一緒にいられない世界なら、いらないよね。


fin.

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