幻想郷*

□ペーパーカット
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ずっと側にいたいと、役に立ちたいと、そう思うことがそんなにいけないのだろうか。疲れきった身体に支えを、荒んだ心に癒しを、崩れる世界に光を。なにが望みすぎだというの?
血反吐を吐きながら習得した忍術も、擦り切れながら戦った日々も、女を捨てて抱かれたのも、全部全部あなたの役にたちたかったからなのに。

『わたしはいつになったらイタチの為になれるのかしら』
そう問うても、次の次の次に返事するとか曖昧なことを言うだけ。

「…もう少し、待ってくれないか」
『もう少しってどれくらい?明日?明後日?一ヶ月後?一年後?百年後?』
あなたはいつもいつも…バカな話だとはわかっている。でも明確なので数字で示して。もうわたし、我慢できないの。
それが求めすぎなことぐらいわかってるんだ。じきにこの感情が薄れていくことも知っている。嫌な話だということも。でもね、わたしじゃ何もできないと思っちゃうとどうしようもなく苦しいの。

『助けてよ』
「凜音、」
『こんなにイタチのことを想っているのに、役にたちたいのに…なにもできない自分が悔しいよ』
ごめんなさい、困らせたいわけじゃないの。わたしに宿った感情が暴れまわってあなたにぶつかってしまった。聞き分けがなくてごめんなさい。

「俺は凜音が側にいてくれるだけでいいんだ」
ほら、またそうやって厄介者扱いする。側にいてもなにもしてあげられないじゃない。なんなら九尾の少年を殺してきましょうか?サスケを連れてきてあげましょうか?木の葉を潰してきてあげましょうか?どれも容易くできることだというのに。わたしはそれぐらい強いのに、イタチを殺せるぐらいに。

思考の海で溺れているようだ。何回考えたって、何度も泣いたって、イタチの心にわたしが触れることはない。


(彼の気持ちに彼女が気付くことなどない)
fin.

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