幻想郷*

□毒
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あなたの言葉が胸に刺さる。じわり、じわりと時間を掛けて身体いっぱいに広がる。やがて癒た頃にまた突き刺される。

「リンネはドMだから嬉しいんだろう?」
こんな風にされることが。ヒソカはわたしの両手首を掴んで首筋に噛み付いてきた。

『いっ、たい…!』
「嬉しがってるようにしか聞こえないなぁ」
甘噛みなら嬉しいんだろうけど、たまに肉を持っていかれるんじゃないかと思うぐらい力が強い。
わたしは決してドMではない。だが、月光に照らされた妖艶なあなたを見ていると麻酔を打たれたように動けなくなる。媚薬を盛られたように、麻薬を口移しされたかのように、釘を刺されたように、あなたに魅入ってしまう。
快楽の先をもっと知りたいと願ってしまう。わたしの望みを叶えてくれたのはいつだってあなただけ。自分という檻から飛び立たせてくれたのも、朝が眩しいからと目を塞いでくれたのも、寒さを凌げる蚊帳を差し出したのも、苦しさを紛らわせる愛をくれたのも、渇いた心に毒液を垂らしてくれたのも、全部全部あなたなの。

「ああリンネ…なんていやらしい子なんだろう」
その瞳を、髪を、唇を、身体を、心を、全部胃の中に収めてしまいたい。

どちらから先に忍び寄ったかと言われたら、間違いなくわたしと答えるだろう。
あなたが気になる女を殺し、あなたに興味をもたれるように振る舞い、特異な能力を見せびらかせ、少し気のあるそぶりを見せて、あとは糸に引っかかるのを待つだけだった。でもあなたは全てをわかった上でわたしに近づいてきた。もう知ってたんでしょ?こんなことを考えてるって。

「リンネ、ボクもうダメ…」
少し苦しそうな表情のあなたが大好き。わたしで悦ばせてあげられてるから。

「リンネ…死ぬまで愛してあげる」

あなたの毒は今日もわたしを喜ばせる。


fin.

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