幻想郷*

□手折られた花
1ページ/1ページ


小さい頃に望んでいた夢はなんだっただろう。曖昧にしか思い出せないがあの人の隣で笑っていられますように、と願ったはずだ。

『ああ、とうとう来てしまったのね』
「早かれ遅かれこうなる運命だ」
昔は優しかったその瞳が、今はわたしのことを射抜いている。真っ赤に染まったそれはわたしを拒絶するようだ。
これでいいんだと自分に必死に言い聞かせる。あなたの負担を軽くできたんだ、こんなわたしでも役に立てたんだと。そう思い込ませる。呪われた道にも花は咲いていた、でもその花を怯えながら手折ったのは他でもないわたしなんだ。

「なぜあんな真似をした」
『何度も言わせないで、退屈な日常に飽きただけ。それだけのことよ』
退屈な日常でもよかった。あなたが隣にいてくれればそれ以上の願いはなかった。夢はなんだっけ?ああそうだ、あなたを呪われた因果の中から救ってあげることだ。

『惨劇に幕をおろしましょう?あなたもわたしも、もう疲れたでしょう』
振りかざされた刃はわたしの心もろとも貫いた。悲しくはない。ただ、本当のことをあなたに教えてあげられないのが残念。

「やめろイタチ」
「ッ!マダラ…邪魔をするというなら、いくらお前でも、」
「真実を知りたくないのか?」
あなたは戸惑った表情を浮かべてしまった。やめて、言わないで。このまま死なせて…愛しい人の手で手折られたいの。

『聞いてはダメ!早く…早く、とどめを、』
「おかしいと思わないか?なんの後ろ盾もない凜音があんな派手なクーデターを本気で企てていたと思うか?」
『マ、ダラ…それ以上はッやめて、』
ああ、もうチャクラが残っていない。情けないなぁ…最後の最後で無様な真実を晒すことになるなんて。

「お前も考えたことはあるだろう?誰かの罪を凜音が背負っている。ではそれは誰だ?」
『ッそいつの話を聞かないで!!』
「呪われた太陽は誰だと思う?お前だよ…イタチ」
『やめろぉおおおお!!』



「凜音…なぜ、もっと早く言わなかった」
ああ、泣かないで。あなたにそんな顔をさせるためにしたんじゃないのに。わたしはあなたを笑顔にすることは出来ないのだろうか。

「…何故、独りで背追い込んだ」
『それはお互い様でしょ』
あなたが呪われた太陽なら、わたしはそれを輝かせる空になりたかった。その輝きを雲が翳らせてしまうのならばすべて払いのけよう。そう決めてたの。

『もういいんだ。不本意だけど、最後に真実を伝えられたから』
心残りなのは、あなたが悲しんでしまうこと。わたしのことで負担をかけたくなかったんだけどなぁ。

「俺がお前を…凜音を、手折ってしまったのか」
『そうだとしても、イタチに折られるなら本望だよ』

だってこんなにも愛しているから。


fin.
友情出演:マダラさん

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ