うちよそ短編集

□恋敵?
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「さぁて、何にしましょうかね〜」
スイーツ店のメニューとにらめっこしながら楽しそうなイーギス。
自身が本当に来たかったのが一番の理由だろうなとルーシーが少しばかり恨めしそうな視線を送る。
でも確かに新しく出来ただけあって、バリエーションに富んだメニューにはルーシーも目移りしてしまう。
どれにしようかと迷っていると横から視線を感じ、顔をあげるとアルトと目がパチリと合った。

「嬉しそうに見てたね」
アルトにそう言われて途端に恥ずかしくなるルーシー。誤魔化そうと、どさくさに紛れて本題であるアルトの好みを聞き返す。

「そ、そういうアルトさんは、どう…ですか? その、どれが好きとか…」
しりすぼみになった声もしっかり聞き取ってくれた様で、アルトは顔に手をやりながら思案する。

「うーん…俺はやっぱりバニラ系が好きかな。チョコも捨てがたいけどね」

「そ、そうですか。チョコ美味しいですよね!」
アルトの答えが余程嬉しかったのか、自然と笑みがこぼれるルーシー。

「あ、因みに俺はイチゴが好きっす! イチゴパフェにしようかな〜。あ、でもこのサンデーも旨そうだな〜」
割り込む様に声をあげるイーギス。アルトは笑いながらそれにもしっかり相槌を打つ。

「今度みんなでお菓子作り大会でもしませんか! なんつって」
イーギスのひょんな提案に少しドキリとするルーシー。
タイムリーな話題がゆえにアルトの返答が気になる。

「良いね! 俺も試したいメニューがあったんだ」

「おぉ! じゃあ俺は食べる専門で参加します!」

「はは。折角だし一緒に作ろうよ」
どうやらお菓子作り大会は開催される方向で決まりそうだ。しかし少しイーギスに嫉妬してしまう自分がいる。

「あ、あの! でも私あんまり料理が上手くないので…アルトさんに喜んで貰えるかどうか…」
先のモヤモヤが相まってどこか否定的な言葉を口にしてしまうルーシー。
そんなルーシーの肩をトンと叩きながら微笑みかけるアルト。

「ルーシーが俺の為に作ってくれるなら、どんなものでも美味しく食べれるよ」
アルトの言葉と優しい笑みに、ルーシーは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
視線を横に向ければ好きな人の微笑みがルーシーを優しく包み込み、そのまま淡いピンク色の世界が広がりかけた所で

「こほん! あんまりいちゃつかないで下さいよ〜。お店ですよ〜」
イーギスの声で我に返る。

「そ、そろそろ頼みましょう! 私も決めましたから!」

「そうだね。それじゃ店員さん呼ぼう」
慌てる二人をジト目で見つめるイーギス。三人の視線が交差し、なんだかおかしくなって誰からともなく笑い出す。
ルーシーがありがとうと意味を込めた合図をイーギスに送れば、イーギスからは今回だけですよという合図が帰ってくる。
仲良し三人組の恋の行方はどうにも分からない事だらけである。


→あとがき
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