うちよそ短編集

□アメ降らし
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「はい! ナギの分!」

「は?」

「これはリオの分!」

「お、おぉ」

「んでこれはマシロの分!」

「……どうも」
次々に飴を配っていくフィオ。
突然集められた他の皆は戸惑いつつも、飴を受け取っていく。


「なんの集まりだこりゃ?」
アルトから飴を受け取りながらムクロがたずねる。

「えっと…成り行き、かな?」
アルトは苦笑いを浮かべながらも説明すると、納得したのかしてないのか微妙な表情を浮かべる皆の姿があった。


「まぁくれるんなら貰っとくよ。あんがとよ」

「ほ、本当に良いんでしょうか?」
既に食べ始めたムクロと対象的に、ルーシーはどうしていいかとオドオドしっ放しである。


少し離れたところでは、アイリーン達が楽しそうに会話しているのが見える。

「おぉ! この味は! …なんだろ?」

「サバ味噌味だってさ……なんかマズそうだね。アイリーンちゃん大丈夫?」

「これがサバ味噌かぁ。美味しいよ! ね、お兄ぃは?」

「…コーンスープ味。お前は?」

「あ? 納豆味…」

「……ぷっ」

「てめ! 笑いやがったな!?」

「仲良しだねぇ〜」




皆が思い思いに過ごす中、一通り飴を配り終えたアルトはフィオに近寄る。

「お疲れ様。皆快く受け取ってくれて良かったね」

「だねぇ。満足満足!」
飴を舐めながらフィオは大袈裟に頷く。
その姿を見て、アルトは少し気になっていた事を聞く事にした。

「でもまだ沢山あるよね? あれはどうするの?」

「んー? あれはまぁ居住区とかの子供達に配るつもり。僕達だけが良い思いするのもね」
そう言ってフィオは穏やかな笑みを浮かべる。
そこにいつもの表情はなく、大人びた顔のフィオはなんとなく綺麗だと思った。


「お? その顔は僕に惚れたかなぁ?」
すぐにまたいつもの表情に戻り、イタズラっぽい笑い方をするフィオ。

「はは。かもしれないね」
アルトは先ほど貰っていた飴を舐めながら答える。
あしらわれたと感じたフィオが文句を言っているのを横目に、口の中の飴を転がす。

甘酸っぱい味を味わいながら、今度飴の作り方でも調べてみようかと思うアルトであった。


→あとがき
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