うちよそ短編集

□恋敵?
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放課後を告げるチャイムが鳴り響き、生徒達は慌ただしく支度を始める。
皆それぞれに部活がキツイだの今日はどこ行こうだのと思い思い口にしながら散らばっていく。
教室から出て行く波に逆らって一人の生徒がルーシーの元に駆け寄ってくる。

「ルーシーさん! 一緒にアルトさんとこ行きましょうよ」

「あ、イーギスさん。はい、行きましょう」
隣のクラスのイーギスはルーシーとその恋人であるアルトの友人だ。
放課後は大体一緒に行動している。

「ぶっちゃけ最近アルトさんとどうっすか? 仲良くしてます?」
アルトがいる三年の教室棟に向かう途中、イーギスが訊ねる。

「そうですね。仲は良いと思いますけど…」

「けど?」
眉根を下げて言葉を詰まらすルーシーに続きを促す。

「アルトさんの好みって何なのかなって…」

「好み?」

「はい…。食べ物の味付けとか…」
ルーシーがそこまで話したところで、アルトがいる教室に着いてしまった。
中を伺うと丁度アルトがこちらに向かってくる所で、イーギスが大きく手を振りアルトに呼びかける。

「アルトさーん!」

「や、イーギス。それからルーシーも。迎えに来てくれたの?」
爽やかな笑みを浮かべながら挨拶を交わす。遠巻きの三年の女子がチラチラとアルトを見ているのが分かった。
ルーシーはアルトの恋人である。分かっていてもこういう場面に遭遇すると不安にもなってしまう。

「じゃあ行こっか」

「あ…」
さり気なくルーシーの手を握り歩き出すアルト。
隣のイーギスは戸惑うルーシーに微笑み親指を立てた。

「どこか寄って行く?」
アルトが二人に訊ねる。今日は特に予定もないので、どうしたものかと思案していると

「駅前に新しく出来たスイーツのお店行ってみましょうよ!」
元気なイーギスの声が響いた。ルーシーが視線だけでイーギスにどう言う事かと問う。

「アルトさんの好み知りたいんでしょ? チャンスですよ」
小声でルーシーに耳打ちするイーギス。
今度アルトには何かお菓子を手作りする予定だったのもあり、確かにチャンスかもしれないとルーシーも納得した。

「わ、私もそこが良いです!」
アルトに反対されたらどうしようと思いながらも、密かにルーシーも自己主張する。

「うん。じゃあそこ行こっか!」
そんな二人を見て微笑みながらアルトも賛同した。
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