うちよそ短編集
□料理
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「あぁ〜‥つっかれた〜」
自室に戻るなり、イーギスはそうこぼした。
朝から任務に駆り出され、あれよあれよという間にもう夕方前である。
今回は第四フェーズに渡る討伐作戦だったが、ここの所それが当たり前となってきている。
任務中の移動や報告書も普通の任務に比べ多いため、一回毎の任務よりもやはり激務である。
「もう今日は寝ちゃいましょうかね〜」
そう独り言ちながら私服姿に着替えるイーギス。
寝る前にラウンジで軽く食べてからにしようと思い、自室を後にした。
「お? 何か良い匂いがする‥?」
ラウンジ前に来たイーギスの鼻腔を、何やら食欲をそそる匂いが刺激する。
中に入るとそこに居たのは、エプロンをしながらフライパンを操るアルトの姿だった。
「あ、イーギス。お疲れ様! もう少し待ってね。イーギスの分もオムライス用意してるから」
イーギスが声をかける前に、アルトは振り向きながら爽やかな笑顔で出迎える。
「え!? マジっすか! アルトさん神っすか?!」
そう良いながらアルトの側まで近づくイーギス。
側に寄れば、先程とは比べ物にならないほど香ばしい匂いが漂う。
亜麻色の玉ねぎが艶を放ち、細かく刻まれたチキンから肉汁が溢れ出し、程よくケチャップで色付けされたチキンライスは、これだけで満足感を得られそうである。
「うぉぉ‥。めっちゃ美味そうっすね! これ食べても良いっすか?」
辛抱たまらんといった感じで、イーギスがチキンライスを凝視しながら訊ねる。
「あはは、ダーメ。オムライスなんだからチキンライスだけ食べても意味無いでしょ?」
手際良く卵を焼きながら答えるアルト。苦笑しながらも優しく答えるアルトは、まるで親の様である。
「さ、出来たよ。一緒に食べようか?」
「おぉ! ありがとうございます! いただきます!!」
「うん。召し上がれ」
二人で眼前のオムライスにありつく。
イーギスは口いっぱいにオムライスを詰め込みながら、アルトに感謝を述べる。
「いひゃほへ、めっふぁおいひいっふわ! アルトふぁんふごいっふね!」
「ははは。食べながらしゃべっちゃダメだよ」
「ふんまへん!」
任務を終えた身体に仲間の優しさが染み渡る。
後何回、こうやって笑いながら戦友と共に歩んでいけるだろうか。
寂しさを感じ始めた心をごまかす為、イーギスは精一杯大きな声で仲間に感謝した。
「ご馳走様でした!!」
→イラスト(頂き物)