死神戦武

□第一章
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空座町 午前二時二十三分 金曜日


まだ、空は暗く起きるには早すぎる時間。


その中を一人の少女と一匹の黒い蝶がかけていく。


辺りは静まり返り、物音一つたたない。ただ少女の駆ける足音が響くだけ。


そんな中突然紙の擦れ合う音が混じる。


「この辺りか・・・」


少女の視線は紙に向けられ、そして蝶に向けられる。蝶の跡を追っているように。


「成程・・・強い魄動を感じる・・・。」


そして少女は重力をものともせず、空を駆け出した。




斯くて刃は振り下ろされる













空座町 午後七時十三分 金曜日



「何だァ!? いきなり山ちゃん蹴倒しといてそのうえ俺らにここをどけだァ!?」


派手な色の髪をした少年はその派手な自分の髪をめんどくさそうに掻き毟った。


「何考えてんだてめぇ? 死ぬか? あぁ!?」


彼の名前は黒崎一護、十五歳


髪の色、オレンジ


目の色、ブラウン


特技は、・・


「何とか言えやこの・・・」


すかさず一護は自分の足を相手の顔にめり込ませる。


「あぁっ!」


「トシりんが!」


不良たちは自分の仲間の倒れる姿を見て、相手の理不尽極まりない暴力に震える。


「ギャーギャーうるせぇ!お前ら全員あれを見ろ!!」


一護の指さした場所には花のいけられた花瓶の倒れている姿。



「問1!あれは一体何でしょうか!?ハイ、そこの一番くさそうなお前!」


急に指を刺されて不良は狼狽える。そして釈然としないながらも応えるために口を開く。


「あ・・あの・・このまえココで死んだガキへのお供えもの・・・」


「大正解!!!!」


答えるやいなや一護に頭を蹴られ、後ろ向きに倒れる姿を見て、おののく。


「じゃぁ、どうしてあの花瓶は・・・倒れているんでしょうか・・?」


先ほど倒した男を心配するように囲む残りの不良どもに再び一護は質問を投げかける。


「・・そ・・それは・・」


「俺等がスケボーしてて倒しちゃった・・・・から・・?」


「そうか・・・」


黒崎一護、彼の特技は・・・


「それじゃコイツに謝んなきゃなぁ!?」



幽霊が見えるということ



「いやぁぁああああ!!」


顔に血をしたたらせ、恨めしそうにこちらを睨んでいた少女の顔を見て謝罪の言葉を叫びながら不良たちは走っていった。


「ふーーー・・・こんだけ脅しときゃもうここにはよらんだろ」


「悪かったなこんなふうに使って」


そう言って、先程の不良たちがしっぽをまいて逃げていった原因の少女と一護は親しげにしゃべり始める。


よく見ると彼女の体は少し透けていて、重力を無視するように宙に浮いていた。


「ううん、あの人たちを追っ払ってってお願いしたのあたしだもん、このぐらい協力しないと。」


その言葉を聞いて一護は小さく口の端を上げて、微笑んだ。


「さて・とそれじゃ新しい花はそのうち持ってきてやるよ。」


「うん。ありがとうお兄ちゃん。これで静かに暮らせるよ。」


「どういたしまして、早めに成仏しろよー」


そう言って一護は片手を上げて、その場をあとにした。
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