心からの笑顔で

□心からの笑顔で
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朝は憂鬱だ。

あぁ、また地獄のような1日が始まるのねって。

それが、前日まで景吾の家にお泊まりしていたのなら尚更…



・・・・・・



「行って参ります」

靴を履いて、鞄を持って…


私には「行ってらっしゃい」と言ってくれる親もいなければ、鞄を手渡してくれる使用人もいない。

これが私のこの家での立場。

まあ、今更そんなことされてもむず痒いわね。


さて、学校行きましょうか!


お嬢様のクセに徒歩ですよー

だから、氷帝学園に通う榊原 ヒメカがアノ(跡部財閥と並ぶ家柄の)榊原 ヒメカだと感づかれないのかもしれないわね。

好都合と言えば好都合。

普通のお嬢様でいたいもの。

…って、また景吾に「お嬢様は普通じゃない」って言われそうね。

よく言われるのよ。

「ハッ お前の感覚はズレてんだよ。バーカ」みたいな顔してね。

思い出したら腹がたってきたわ。

私、景吾よりは一般常識や庶民の価値観、知ってい……理解していると思うのだけれど。



後ろでクラクションが鳴る。

別に私が通行の邪魔をしている訳じゃないのよ?

景吾の家のリムジン。


噂をすれば、ってヤツね。


「お邪魔しまーす」

勝手にドアを開けて乗り込んだ。

跡部「まだ乗れって言ってねーだろ」

「いいじゃない!どうせ行き先一緒なんだし」

それより運転手さんが申し訳なさそう…

ドアを開けてくれるつもりだったのね。

「気にしないでください。慣れてますから」

そう言うと、運転手さんは苦笑いをして「それでもヒメカ様のためにお世話させてくださいね」と言われた。


ウチはわたし限定でドアを開けてくれないのよね。

つまり両親や兄は開けてくれるってこと。

差別よ、差別!

運転手さんが、お父様やお母様に何か言われたに違いない。

パーティーの時とかは別なんだけれど。

ってのがまたムカツクわね。


車のドアに限らずお嬢様らしいことは何もしてくれないのよ。

まぁ、何も出来ない世間知らずのお嬢様よりはいいか。

そういうことにしておくわ。


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