story of flour
□プロローグ
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「バカみたい」
わたしのつぶやきに、相手は大きく目を見ひらいた。
わたしは、思ったことをすぐ口に出してしまうようなタイプではない。どちらかと言えば、よく考えてから行動をおこす方だと思う。
それでも口に出したのは、べつに頭でよく考えたからじゃないけど。
「あいつの何を見てきたのかしらね」
だって、すごく腹が立ったから。
「なに?ケンカ売ってんの?」
相手がすごい形相でにらんできて、横にいたグルの二人が、わたしが逃げられないように両側に立ちふさがっても。
全然、恐くない。
「事実を述べてるだけよ。いい?」
そこでいったん、言葉を切った。
この先を口にして、本当に大丈夫かどうか確かめる。別に相手の反応を気にしてるわけじゃない。わたしの心が保つかどうかだ。
だけど今は、怒りの方が勝っているから、少しくらい誤魔化せるはず。
そんなことを、ほんの数秒の間に考えて、わたしは大きく息を吸いこんだ。
「あいつはね、恋愛の"れ"の字も知らないようなガキなの!!そんなヤツが、あんたが言ったみたいな器用なマネ、できる訳ないじゃない!!」
そこまでまくし立てると、とうとう相手の顔が悲しみに歪んだ。それでも私を睨み付けるのは、きっと、かき集めたほんの少しの強がりだろう。
「なっ、なによ!少しぐらい、彼と仲いいからって…っ」
「…そうよ。だってわたしたちは…」
その先は続けられなかった。
ついに泣きだした相手に背をむけ、帰路をトボトボ歩きだす。彼女を慰めるのは、わたしの役目じゃない。
結局、わたしと彼女はおなじだ。すすむ方向さえ違ってしまったけれど、根本はすべて同じ。
太陽に憧れて、恋をしてしまった、例えるなら、そう。
ひまわり―――――――
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