story of flour

□プロローグ
1ページ/1ページ













 「バカみたい」

 わたしのつぶやきに、相手は大きく目を見ひらいた。

 わたしは、思ったことをすぐ口に出してしまうようなタイプではない。どちらかと言えば、よく考えてから行動をおこす方だと思う。

 それでも口に出したのは、べつに頭でよく考えたからじゃないけど。

 「あいつの何を見てきたのかしらね」


 だって、すごく腹が立ったから。


 「なに?ケンカ売ってんの?」

 相手がすごい形相でにらんできて、横にいたグルの二人が、わたしが逃げられないように両側に立ちふさがっても。

 全然、恐くない。

 「事実を述べてるだけよ。いい?」

 そこでいったん、言葉を切った。

 この先を口にして、本当に大丈夫かどうか確かめる。別に相手の反応を気にしてるわけじゃない。わたしの心が保つかどうかだ。

 だけど今は、怒りの方が勝っているから、少しくらい誤魔化せるはず。

 そんなことを、ほんの数秒の間に考えて、わたしは大きく息を吸いこんだ。

 「あいつはね、恋愛の"れ"の字も知らないようなガキなの!!そんなヤツが、あんたが言ったみたいな器用なマネ、できる訳ないじゃない!!」

 そこまでまくし立てると、とうとう相手の顔が悲しみに歪んだ。それでも私を睨み付けるのは、きっと、かき集めたほんの少しの強がりだろう。

 「なっ、なによ!少しぐらい、彼と仲いいからって…っ」
 「…そうよ。だってわたしたちは…」

 その先は続けられなかった。

 ついに泣きだした相手に背をむけ、帰路をトボトボ歩きだす。彼女を慰めるのは、わたしの役目じゃない。

 結局、わたしと彼女はおなじだ。すすむ方向さえ違ってしまったけれど、根本はすべて同じ。

 太陽に憧れて、恋をしてしまった、例えるなら、そう。




 ひまわり―――――――














[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ