□そして王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ
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「まもちゃん、お帰りなさい」
「・・・ぇ・・?」

俺は彼女の前でキョトンと立ち尽くしてしまった。



ーーーーーー




戦いが終わり再び留学して1年。
当初は1年で終われるか不安もあったが、以前あれだけ彼女に心配をさせた上に戦いには何の助けもしてやれなかったのだ。

それに予想以上の悪い虫がついたとの情報もあり、俺はそれまでよりも必死に勉強しなんとか予定通り帰国できた。


実は彼女には何の連絡もしていない。
昨夜も国際電話で話したのだが、帰国することは言わないでおいた。

ただただ、彼女を驚かせて喜んでもらいたかったのだ。



空港に降り立ち、出入り口に向かい歩いていると

『ぽんぽん』
肩を叩かれた。

「お兄さんお迎えの人いないの?彼女いないんだぁ?私が遊んであげよっかv」
「・・・・」
もしかしてこんな所でナンパされているのだろうか。

とりあえず断るために、振り返りながら拒否の意思を示す。
「いや、前世から決めている人がいるので。娘もいますし」
ナンパの拒否などこれくらいぶっ飛んだ言葉でいいだろう。
嘘では無いし。

伏せていた目を開け、俺は絶句した。



そして冒頭へ戻る。





ーーーーーーー



一瞬分からなかった。

月光を思わせるふわふわと長い髪に、彼女の好きな純白の膝上丈のワンピース。

遠い記憶の姫を思い出した。

「・・お帰りなさい」
「・・・うさ・・・だよな?」
俺の質問を聞いたとたん、絵本のお姫様のように微笑んでいた彼女の頬がぷくっと膨れた。

「はぁ?もしかして分からないのっ?」
やっと見知った表情が見れてほっとする。

少し大人びた顔もそうだが、なによりトレードマークのお団子が無かったのだ。

「ち、違うよ。今日はまたやけにめかしこんできたな」
苦笑して彼女を抱きしめる。

内心もっと驚いていた。
記憶の中の彼女はもっと幼かった気がする。

「ふふ・・・まもちゃんの匂い久しぶりーv」
腕の中で甘える声も久しぶりだ。
心なしか少し声まで大人びた気がする。


「髪・・・切ったんだ」
柔らかく細い髪に指を絡ませる。

トレードマークのお団子をおろすと地面に着くほど長かったのだが、今はおろしても腰くらいまでしかない。

「うん、ちょっとね。みんなから大人っぽくなったねーって言われるんだよ」
『ほわー』と微笑む彼女。

ここ1年の疲れが氷を溶かすように癒されていく。


「寂しかったよまもちゃん・・お帰りなさい」
「ああ・・・俺も」
ぎゅうっと抱きしめあう。

ふと気づいた。彼女の口から『寂しい』と聞くのは久しぶりだったのだ。

きっと留学中は俺を気遣って、言わないでいてくれたんだろう。

彼女が中学生の頃から一緒にいるが、
自分の気持ちに素直な、悪くいえば子供っぽいところのある子だったはずなのに。

俺の為に言いたいことを我慢してくれたのかと、気づいた。


『ぽん』と髪を撫で
「帰ろうか」
「うんっ」
しっかり手を繋いで空港を後にした。
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