月
□未定
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急にテレビを熱心に見始めたデンマンド。
うさぎは少し離れた隣に腰をおろした。
サフィールはうさぎの持ってきた菓子を持ってキッチンに向かった。
「・・・デマンド、何が始まるの?」
どうやらまだコマーシャル中のようだ。
「お前も隣で見ていろ。勉強になる。」
「ふぅん。」
やはり難しい内容なのかと少しテンションを下げながら、彼のされるがままにぴったりと隣に移動させられた。
そして、始まった。
「・・・あれ、ぇっ、嘘・・」
うさぎは混乱し、言葉を失った。
見てはいけないものを見てしまった。
『それいけ、ア●パ●マ●』
確かに画面にはそう出ている。
小さな幼児が好みそうな暖かな絵と、馴染みの多彩なキャラクター。
久方ぶりに見たうさぎにとっては初対面のキャラクターもちらほら見える。
一瞬、チャンネルを間違えたのかと思った。
どういじってやろうかと隣を見たところ。
先程より真剣な面持ちで少し身を乗り出している。
「ぇ・・?ええ・・?デマンド・・これ見てるんだ・・?」
「静かに!話が始まる!」
「は、はい!」
ダメだ真剣すぎて会話もままならない。
うさぎは物凄く今の心境を共感してもらいたくなり、急いでデマンドの腕をすり抜けサフィールの元へ向かった。
「おい・・セーラームーン。兄さんにこんな女子高生の好むような菓子をもってくるとは・・」
「そんな事どうでもいいのよ!女子高生どころじゃない番組を、あんたのお兄さんは真剣に見てるんだけど!?」
「ああ、あれか・・・」
ふっとサフィールが目を伏せる。
もしかして、彼も兄の奇行に頭を悩ませていたのかと少しほっとした。
「なんだか可愛いだろう?兄さんはバイキ●マンの大ファンなんだ」
ちょっと頬を染めながら同意を求められた。
「あぁ・・・うん。そだね、私は赤ちゃんマン派かな・・?」
遠くを見つめながら、うさぎは呆然と話にのった。
(私か?私が可笑しいのか?今のところ多数決で私負けてるなー・・・、えー。こんなはずじゃなかったんだけどなー)
珍しく正義の味方が絶望の淵に立たされている時。
「セレニティ!サフィール何をしている。見逃してしまうぞ」
「分かってるよ兄さん」
「・・・」
リビングから普段より少しテンションの高いデマンドの声。
サフィールも素直に応じている。
(・・・私が変なんだ)
うさぎはそう自分に敗北を突きつけた。