紅一葉

□プロローグ〜夢幻〜
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◆◇◆

『…して……が……な…さい…なさ…い。』

涙が頬を伝う。
そこにいるのは私であって私ではないのに…。

『貴方様は……で…私は……していた…。』

胸が苦しくて苦しく切ない気持ちが溢れそうになる。
抑えられない感情も…伝えたい言葉も…そこにいる彼には届かない。

ゴォォォーッ

吹き荒れる炎の熱を感じる。
大地が揺らぎ、空が裂けても荒れ狂う力は治まることはない。
人々の悲痛な叫びも、
大地の悲鳴も、
空の怒りも、
彼等の耳には届かない…。

荒れ果てた荒野でゆっくりと力が失われ、急速に冷えゆく自らの身体を感じる。

いっそこのまま深い深い眠りについてしまおうか?
そう思える程の絶望の中でも、
私の中にある想いの強さだけが、瀕死寸前の身体をつき動かす…。

まだ伝えていない。
救わなくてはいけない…。

全てを終わらせなければ…いけない。





まだ、貴方に…
私は…


◆◇◆
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