短編
□年の差なんて
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「関係ないと思うんですよね」
紅茶をカタンと置き、ぼそりと呟いたのは自分ではなく彼女だった。
話しが読めなくて何が?と訪ねると、年の差です、とすぐに答えは帰って来た。
何故彼女がこんな話を急に振ってくるのかが分からなかった。いや、自分が勝手に聞いていただけか。
どちらにせよ、いきなり年の差なんて関係ないと言われてもなんて答えれば良いのか悩む。
「そう・・・」
イマイチな反応しか出来なくて申し訳ないと思ってはいるが、若い子の話しは分からない。
三十代後半にそろそろ差し掛かる自分は二十代前半の彼女の言うことが全て輝いて聞こえた。たまに若い子で「三十代なんてまだまだ若いじゃないですかぁ」と言ってくる子がいるのだが嫌味にしか聞こえない。どうせ心の中だとババアだと思っているのだろう。
でも、この子は何かが違った。
私は保育士で、この職業に就いてもう十年以上にもなる。十年やってれば子供に対してのそれなりの対応だって出来るし、考えてることも分かってくる。
それでも、自分に子供が出来たら、なんて考えたことがなかった。
いらない、といえば終わってしまう。けれどいらないワケじゃない。子供を見ていると、あぁ、自分も子供がほしいなぁと思ってしまう。
母性か。
相手が居ないわけでもない。合コンで保育士だって言えば食いついてくる男はいるだろう。容姿に自信はないが。
けれど、やっぱりそういう行為が好きではなかった。幾度も男と肌を重ねてきたが慣れないものはやっぱり慣れない。ワンナイトカーニバルで終わってしまう。
しかも自分は名前を覚えないときた。これじゃあ男も呆れて自分の前から去ってしまう。
たまーに一生懸命名前を覚えてほしいようで、デートに誘ってきたりするが全部お断りしている。理由は単純。興味がないから。
だから、コイゴコロなんて感じる暇もないし、そんな感情だってないと思ってきた。
性欲さえ解消出来れば良かったんだ。
でも、突然ある日この子が保育園にやってきた。