連載
□May my feeling reach you. -私を想って-
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「……おい…っ!?」
何が起こったのか理解できない、というように銀時はNo nameのもとへ近寄ろうとした。しかし、その直前に医師から制止される。
「そこを……どけ」
「落ち着いてください、坂田さん」
「バカヤロー!落ち着いてなんかいられるかッ」
「あなたが今ここで何をしようとNo nameさんの記憶がもとに戻るわけじゃない」
焦る銀時に医師は冷酷に言い放った。
「……!」
「ってことはやっぱり……」
絶句した銀時に代わって新八が口をはさんだ。
「ええ、記憶障害を引き起こしていますね。発見された時はすでにこの状態だったので原因は不明ですが…よほど強い何らかの衝撃を受けたのでしょう」
「……」
「…No name」
医師のその言葉に銀時はがっくりとうなだれた。
「銀ちゃん……」
そんな銀時の様子を見て、神楽は銀時の肩に手を置いた。
「…先生。もうNo nameの記憶は戻らないアルか……?」
「今の段階では何とも……しかし、先ほど検査した結果ではすべての記憶を失っているというわけではなく、日常生活に必要な知識や記憶については障害を認めることはできませんでした」
「!……じゃあ…」
「はい。そんな絶望的な状況でもありませんよ。何かがきっかけとなってすべてを思い出す可能性も十分考えられます」
それを聞いた新八は安どのため息を漏らし、銀時は頭をあげた。
「ですって!銀さん!」
「……あぁ」
「ってどういうことアルか?新八」
「ほら、前銀さんが記憶喪失したことあったでしょ。あの時のように何かがきっかけとなってNo nameさんの記憶が完全に元通りになる可能性もあるってことだよ」
「マジでか!やったアル!」
「とにかく。今日はもうお帰りください。今後はNo nameさんの様子を見て退院の日時を決めましょう。明日以降、面会はいつでも受け付けておりますので、また明日おいでになってください」
「わかりました…」
そう言って銀時たちが立ち上がり、帰ろうとした瞬間だった。
「…あ、そういえば……」
思い出したように医師が懐から封筒を取り出た。
「…まだ何か?」
「No nameさんが発見されたときに、これが近くに落ちていたそうです」
と言いながら医師は銀時に封筒を手渡した。
「…んだ、これ……」
「確かにお渡ししましたよ」
そしてお先に、と言って部屋を後にする。
「あ、ありがとうございました…!」
「……」
「銀ちゃん、それ…何アルか…?」
「手紙か…?」
銀時は封筒を破り中身を取り出した。
「ちょっと…!銀さん!それ、No nameさん宛ですよ!開けちゃまずいです!」
「バカか、お前は。…こいつが…こーなった理由が分かるかもしれねェだろうが」
銀時は手紙の文面を目で追った。
すると、行を追うごとに銀時の形相が変わっていく。そして終にはその手紙を持つ手が怒りで震えだした。
「ちょ…銀さん……?」
「……」
そして何も言わず、部屋を後にした。
「あ、銀ちゃん!待つアル!」
そんな銀時の後を神楽もあわてて追った。
「ちょっと…!?銀さん…!?神楽ちゃんっ!?待ってください!……あ、じゃあNo nameさん。今日は僕たちここで帰るんで、ゆっくり休んでくださいね、また明日も来ますから!」
相変わらず虚ろな目をしているNo nameに言い残して新八も部屋を後にした。
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